第84話
俺は朝食を済ませるとアンちゃんと別れ、昨日の武器屋へ向かった。
「いらっしゃい。ってアンタは昨日の。」
「ジローだ。」
「昨日の酒、酒・・・」
さすがドワーフ。いきなり酒の話かよ。
「気に入って貰えたかい?」
「あんな酒、今まで飲んだ事ねぇぞ。アンタが作ったのか?」
酒魔法で作っているから、俺が作っていると言っても間違いではないと思うが。俺がどう回答すべきか迷って考え込んだ。
「あれだけの酒だ。製法は秘匿されても当然だな。」
「まあ、俺も作り方はあまり詳しくは知らないんだ。」
なんだかんだ言っても、酒飲みに悪い奴は居ない(と思う)。仲良くなった店主のケネスと酒談義に花を咲かせていたが、俺が短剣が欲しいと言うと急に真面目な顔になった。
「ジローは剣士じゃないよな。とすると護身用かい?」
「そうさ。俺は魔術師だから接近戦はからきしだよ。」
「今度は防具も持ってきな。俺が見立ててやるよ。」
「え、武器屋なのに防具も扱ってるのか?」
「いや、防具は知り合いの方に任せるがな。しかしお前が剣士じゃなくて残念だ。剣士だったら特注で剣を打ってやったのに。」
ケネスは酒が入った甕をチラッと見ながら短剣を見繕ってくれた。
「俺のじゃなくても剣を打ってくれるかい?」
「ああ勿論だとも。あれだけの酒を貰っちまったんだから魂込めて打ってやるぜ。」
「じゃあ今度連れて来るよ。」
俺は短剣の代金を支払って店を出た。今度はアンちゃんを連れてこなきゃ。俺は適当につまみを買って、ちょっと寄り道してから宿へ戻った。
*****
今日は7の日なので、王城へ行く日だ。憂鬱だ。胃が痛い。酒のせいでは無いとおもう。という事で、今日はアンちゃんにも付いて来てもらう事にした。アンちゃんも一緒で良いかという事は昨日のうちに宰相閣下に確認済みだ。国王陛下にも宰相閣下にもお目通りした事あるしね。
「私が行って何か手伝える事ある?」
「側にいてくれるだけで良いよ。」
何なら一緒に魔法の練習してもらっても良いしね。それにエマ王女殿下と面識を得て、人脈を広げるのも良い事だよ。それにエマ姫様とお会いすれば、俺が幼女趣味じゃないって事も分かってもらえるはず。何か最近、時々変態を見るような目で見られている様な気がするんだよね。疑惑は晴らしておかないと。
いつもの如く案内されて石造りの間で待機していると、エマ王女殿下がお越しになられた。やはり今日はお一人だ(お付きの人除く)。もう満面の笑みである。うーむ。
姫様は俺を見ると声をかけて下さった。
「ジロー、きょうもよろしくね。」
「はっ、こちらこそ宜しくお願い致します。」
ここで初めてアンちゃんに気づいたみたいだ。
「こっちの人はだあれ?」
「私はジローとペアを組んでおります冒険者のアンナと申します。」
「なにをする人なの?」
「わ、私は、私は、ジローのアシスタントでございます。」
半ば俺が無理やり連れて来た様なもんなのだが、ついにアンちゃんも家庭教師のアシスタントデビューしちゃったよ。
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