第55話

 ビーム辺境伯にお呼び出しを受けたのは、冒険者の中でも活躍が目立った者たちに特別に褒美をくれると言う事らしい。


 ビーム辺境伯の館に入り前回と同じ謁見の間で待つ事しばし。前回とは違ってニコニコ顔のビーム辺境伯と家令他ご一同様がやって来た。戦争に勝ったのでご機嫌の様だ。これならあまりご無体な事は言われないよね?


 こちらは組合長を筆頭に、冒険者が数名だ。俺たちの他には森の狩人のイワンもいる。どうやらパーティー全員ではなく、リーダーだけお呼ばれしているみたい。だったら俺たちはアンちゃんだけで良くね。俺こういう場は嫌いだし。アンちゃんは好きそうだし。


 例によって家令の人からお褒めのお言葉と報奨金を頂きました。今回はウェーバー帝国軍を打ち破ったという事で、大盤振る舞いの一人頭金貨20枚です。日本円にしてざっと200万円ってところか。命を懸ける値段としてはどうなんだろう。まあ、冒険者全員に配るみたいなので、総額としては結構な金額になるから仕方ないのかな。


 もう帰してくれないかなーと思っていたら、また偉いさん達がごにょごにょ始めちゃったよ。こっちの人たちって式次第とか決めておかないの?と心の中でぶつくさ文句を言っていたら話がまとまったらしい。


「今回の勝利でお前達の果たした役割は大きい。そこで直に活躍の様子を聞きたいと思う。直答を許す。」

 ビーム辺境伯からお声が掛かった。またこれかよ。


 冒険者たちから話を聞いて、ニコニコしながら適当に相槌を打つ辺境伯。冒険者たちは自分たちの活躍も説明するが、あの作戦が良かったとか、アイツの魔法が凄かったとか、余計な事までいる。止めてくれ!それでは俺が中心人物悪者になっちゃうじゃないか。


「最後にそこの魔法使い。名前は・・・」

 家令が耳元でごにょごにょ言う。

「名前はジローと申すか。前回の風魔法も凄かったが今回の水魔法は更に凄い物であった。実はこの度、今回の戦争について国王陛下に報告に行くのだが、お前も同行せよ。」

イヤです。行きたくないです。碌な事にならないと思います。


 と思っていたら、俺が返事するより早くアンちゃんが返事してた。

「喜んでお供致します。」

何でいつもキミが返事するわけ?


「助かる。今回の事について報告の文を出したところ、国王陛下がジローに興味を持たれた様でな。連れて来る様にとのご命令なのだよ。」

 アンちゃんは目をキラキラさせているけど、俺はきっと死んだ魚の目をしているに違いない。


 謁見の間からビーム辺境伯ご一同様が退出されたあと、漸く俺たちも開放された。帰り際にお役人様に気になっていた事を聞いてみた。捕まえたあのミュエーたちの事である。

 引き取って頂けるかなと思ったら下賜するとのお返事を頂いた。凄いお宝だったら別だけど、ミュエーは沢山居るから上げるという事らしい。ミュエーってどの位餌食べるのかな?ま、もう既にひとり大食らいの子が居るんだけどね。






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