第54話
その夜何時もの様に焼酎のお湯割りを飲んで眠りにつくと、女神様のお声が聞こえた。
(その、まあ、なんだ。生き残れて良かったな。)
コーラス様だ。コーラス様、ご心配して頂きありがとうございます。
(おまえの心配と言うより、アリアがしつこくってな。)
どうやらアリア様もこちらにお越しになり、二柱で一緒に神界から下界を覗いていたらしい。俺たちはスポーツ中継ですか。
(おまえが死にそうになる度に、やれ雷を落とせだの、神威を発動しろだのうるさかったんだよ。そんな事おいそれと出来るかってんだ。おまえ、そんなにアリアに気に入られてるんか?)
いえ、アリア様は私という人間ではなく”この世界に来られるアイテム”を無くしたくないだけだと思いますよ。
俺の考えを読んだコーラス様は、ちょっと困った様な雰囲気だ。アリア様に何か無茶振りされていらっしゃるのだろうか?
(魔法も上手く使える様になって来た見たいだし。直ぐ死ぬことは無さそうだな。)
そう言えば、昨日魔法を教えて欲しいと言われたのですがどうでしょうか。
(教えるのは構わねぇよ。この世界の人間はみんな魔法を使えるが、人それぞれだからな。全員が全員上手く使える訳じゃねえ。そこんとこだけ注意だな。)
なかなか難しいものですね。この世界の殆どの人は、生活がちょっと便利くらいの魔法しか使えない様ですからね。
(それより、あの娘が助かってよかったじゃねえか。)
アンちゃんの事ですか。コーラス様とアリア様のおかげでアンちゃんの命が助かりました。ありがとうございます。
(それでこの後どうするんだい?ん?ん?)
何か面白がっておられませんか、コーラス様。そう言えば、アンちゃんに何か吹き込んだのではありませんか?
(・・・ちょっと急ぎの用事を思い出した。また様子を見に来るからな。じゃあな。)
やっぱりアンちゃんを唆しているのは貴女様ですね。コーラス様。
*****
翌日組合事務所に行くと早速お着換えさせられた。前回は開戦直前でそんな事には構っていられないとばかりそのまま連れて行かれたが、今回はさすがにそれはマズイので新品の服を着る事になった。お貴族様に失礼があってはイケナイ。物理的に首が飛んじゃうよ。服は組合が用意してくれた。
着替えて出てくると、アンちゃんも俺と同じような服を着ている。いや、今までも同じような服を着ていたんだけど、女性ってもっと違う服を着るんじゃないの?
「私は剣士ですから。」
胸を張ってそう言われると何も言い返せないな。俺たちは組合長に連れられてビーム辺境伯の待つ館へと向かった。
(何も面倒が起きません様に。お願いいたします、コーラス様。)
俺は心の中でコーラス様に祈った。
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