第52話
「みんな良くやってくれた。先ずは礼を言おう。ありがとう。そして、ここに戻って来れなかった者たちもおるが、その者たちの冥福を祈ろう。」
組合長の話が始まった。
「みんなが3日間持ちこたえてくれたお陰で戦に勝てた。僅かばかりだが酒とつまみも用意したので、飲んで行ってくれ。」
事務所の1階が急ごしらえのパーティー会場みたいになっている。ちょっとしんみりした雰囲気も漂ってはいるが、一応戦勝パーティーなんだし頂くとしようか。すでにアンちゃんは食べ物の方に走って行っちゃったし。
俺が壁際でエールをちびちび飲んでいると、森の狩人達がやって来た。金太郎のイワンだ。
「すごい活躍だったじゃないか。でも良く生き残れたな。」
俺は温いエールを一口飲んで答えた。
「まあ、普通敵のど真ん中に突っ込むって言ったら、自殺行為だよね。あそこで竜騎兵が来てくれなかったら死んでたと思うよ。」
竜騎兵さまさまです。今度餌でも持って行ってあげようかな。何喰うのか知らんけど。
「だけど竜騎兵3騎って少なくないか?もっと連れて来てくれれば楽に勝てただろうに。」
「飛竜を従魔にして飼育するのは大変なんだよ。王都でも5羽しかいないんじゃなかったかな。」
イワンが飛竜の飼育について教えてくれた。飛竜に餌を持って行くのは止めだ、うん。腹を壊して死にでもしたら大問題だよ。
「しかし、帝国の奴らは何で今回竜騎兵を使わなかったんだろう?」
イワンに聞かれたが、俺に分かる訳もない。
「帝国にも竜騎兵がいるのか?」
「なんだ知らないのか。帝国と言ったら、先ずは竜騎兵なんだ。帝国はどうやってか知らないが飛竜を殖やす方法を見つけて、竜騎兵の数も多いんだ。竜騎兵には城門なんて関係ない。空から油樽を落として火事にしちまえば良いんだからな。」
確かに、制空権を握られたら勝てんよな。
「それが今回に限って1騎も来ないなんて不思議で仕方ないぜ。」
「それなんだけど・・・」
俺たちの会話に割り込んで来た。”草原の探索者”と言うパーティーだ。俺とアンちゃんも良く草原に行っているから、偶に出会って顔見知りなんだ。
どうでも良いけど、森の狩人といい、草原の探索者といい、この世界のパーティー名にはひねりがあまり無いよね。まあ、中二病患者が少ないのだろう。
「半年くらい前、私たちに依頼があったんだ。」
草原の探索者のメンバーでステフと言う子が話し出した。半年くらい前と言うと、俺がこの世界に来た頃かな?
「ある夜、大草原の方で大きな火の玉が打ちあがって大きな音がした、って言う事件があって。それの調査依頼を受けたのよ。」
「・・・・・」
「それで大草原の結構奥の方まで調べに行ったのだけど、結構な数の飛竜が死んでたの。それがどうも帝国の竜騎兵だったみたい。」
何となく心当たりがあります。もしかするとその原因って俺か・・・?
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