第24話

「・・・・・正直驚いた。こんなすごい魔法が使えるなんて。」

アンちゃんから感想頂きました。どうやら高評価の様です。舌打ちじゃなくて良かった。

「これなら中型の魔獣とも渡り合えるんじゃない?」

「分からないな。俺は魔獣と戦った事無いし。相手もじっとしている訳じゃないでしょ。」

「そっか。」

「今回は的が岩だったから上手く行ったんだと思うよ。」


「それに呪文の詠唱も聞こえなかったような・・・」

「俺の流派は小声かつ早口で唱える流派なんだ。」

最早もはやごまかすのに必死である。今後はライターと飲水とバケツ位の穴を掘る程度に抑えておこう。


 どうやらアンちゃんは俺に護衛は不要じゃないかと思ったらしい。折角ペアを組んだのに即日解散では、成田離婚も真っ青だ。

「これだけの魔法が使えても、私とペアを組んでくれる?」

不安なのか、アンちゃん。

「もちろんだ。さっき登録したばかりだろう?」

しおらしいアンちゃんもかわいいな。


「実は剣士ってあんまり儲からないの。害獣駆除の現場は大体遠いから旅費も食費も掛かるし。武具や防具の手入れにもお金掛かるし。だからジローさんと一緒だとすごく助かるの。」

前言撤回。完全にATM扱いだな、俺。前世でも飲み屋のお姉ちゃんには結構授業料払ったしな。でもまぁ、この世界で16歳の女の子が生きて行くのも大変なんだろう。俺はかわいい子には甘いのだ。


 組合事務所で買取りしてもらったところ、本日の売り上げは銅貨80枚だった。一人頭銅貨40枚。日当約4000円ってところか。今日は腕試しもあったから仕方ないけど、明日から頑張ろう。

 なんて思って宿へ帰り夕飯を食っていたら、暫くしてアンちゃんがやって来た。


「なんだ?忘れ物か?相談事か?」

「私もこの宿にしようと思って。ペアなんだから近くに住んでた方が便利でしょ。」


 それはそうなんだが、宿屋の大将がダブルの部屋にしますかなんて聞いてきやがった。ちがうから、そんなんじゃないから。ツインの部屋にもしねぇよ。別の部屋ね。一人ずつ別々。大将と交渉している後ろでアンナが何かごにょごにょ言っていたが、良く聞こえなかった。

 ちょうど向かいの部屋が空いていたので、アンナはそこに泊まる事にした。


 それから毎日二人で出かける事になった。デートじゃないです。仕事です。前世と違って土日休みなんていうものは無いので、皆さん基本毎日労働です。

 でも雨が降ったらお休みね。誰が決めたって?俺様ルールだよ。雨に濡れて採集なんてしたくない。この世界にはレインコートも雨合羽も無いんだから。ずぶ濡れよ。


 雨が上がった日、俺は酒飲んでゴロゴロしていたかったのだがアンちゃんに引っ張られて仕事に来た。何でも、今日はアンちゃんの剣の技量を見せてくれるらしい。

 前回俺の魔法を見せたから、今度はアンちゃんの番って訳ね。

 

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