第22話

 あの後、コーラス様の愚痴?を延々と聞かされた。アリア様の事が嫌いな訳ではないのだが、相手をしていると仕事の時間が無くなり残業になるらしい。女神様にも労基法ってあるのだろうか。


 どうしたら良いと思うかと仰せになったが、ただの人間が分かるはずもない。でも待てよ。アリア様は基本的に真面目な性格だ。そのうえでちょくちょく遊びに来るという事は、仕事をサボっているのでは無く早く片付けているのではないだろうか。

 このような考えをコーラス様にお伝えしたところ、

(アリアに聞いてみる。)

との仰せだった。仕事が早く片付く様になると良いですね、コーラス様。


 翌朝目を覚ますと、アンナは未だ眠っていた。改めて観察してみると、背は俺より低いが160cmくらいはありそうだ。剣士だけあって引き締まった体つきをしている。ツルペタと云う訳では無いが、巨乳と言うほどでは無い。Cくらいかな。何で判るかって?昨夜おぶって連れて来たからだよ。


「うぅ。」

お、アンナも目が覚めたみたいだ。

「ここは・・・はっ。」

俺を見ると、掛け布を抱きかかえる様にして壁際へ後退った。

「私が眠っているうちにいやらしい事をしたのね?」

「してねぇよ。俺は床で寝てたんだよ。」


 アンナも着衣の乱れとかが無いのを確認して一先ず安心したらしい。

「だいたい、ペアを組もうとか言って俺を引っ張って行って、飯食って酒1杯のんで寝ちゃったんだろ、お前。どこに泊まってるかも分からないから、俺の所へ連れて来たんだよ。」

「面倒をかけてごめんなさい。」

素直なところはコイツの美点だな。


「ところで、俺とペアを組むって言う話は未だ続いているのか?」

「もちろん!」

ただ夕飯をごちそうになりたかっただけじゃないんだね。

「4元素扱える人なんて、滅多に居ないもの。」

え、そうなの。この世界の人みんな魔法が使えるんじゃないの?


 俺のこの世界での知識の大半はアリア様から頂いたものだ。いくら女神様とは言え、別の世界の細かい所まではご存じなかったのだろう。


「私は剣士だからもともと魔法の適性が低いの。だけど頑張って、着火の魔法と飲水の魔法だけは覚えたの。旅をするときにはとっても役に立つのよ。」

俺だって、最初は自販機探したもの。飲み水出せるだけでもすごく便利だよね。

「だから4元素全部扱える人は貴重なのよ。」

アンナの目は餌に飛び掛からんとする猫の様にランランと輝いていた。もう殆ど首根っこを押さえつけられた感じだ。

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