第19話

「何時までこうしている気、離して。」

あんちゃん改めじょうちゃんに睨まれた。おっとセクハラはイカン。俺は抱きしめていた腕を離した。

「でもこのままでは壁にぶつかっていたわ。一応お礼を言っておく。ありがとう。」

気は強そうだが礼儀はきちんとした嬢ちゃんの様だ。


 さて模擬戦はと言うと、2本先取で嬢ちゃんの勝ちとなった。素人目に見ても、最後は嬢ちゃんが吹っ飛ばされた様にしか見えなかったけどな。

「俺の負けだ。」

ガチムチ剣士は折れた木刀を見せた。折れたと言うには断面がきれい過ぎる様な気もする。まるで何かで切り落とした様に。丁度そこは両者がぶちかましをした際に木刀同士がぶつかった辺りだ。


 午前中の会議室に戻り暫く待っていると、試験官が入って来た。

「二人とも合格だよ。おめでとう。」

「「ありがとうございます。」」

思わず声が揃っちゃったよ。これで無職は回避できた。やったね。ただ、個人事業主だから自分で頑張らないと収入が無いんだな。ま、死なない程度に頑張ろう。


 嬢ちゃんの方を見ると、”当然よ”見たいな顔をしている。欠食児童のくせに。でも模擬戦の最後に何かの技を使ったのは間違いないと思う。そう思って嬢ちゃんを鑑定してみた。


名前 :アンナ

性別 :女

年齢 :16歳

職業 :冒険者<剣士>

レベル:18

スキル:レイウス流剣術:印可


ざっとこんな感じだった。印可って、剣術の腕前の事だった気がする。


「さあ、今日からお二人はD級冒険者です。頑張って下さいね。」

試験官に薄い冊子を渡された。これを読めという事なのだろう。後で宿屋ででも読もう。

「この後、4番窓口でプレートをお渡ししますので受け取って帰って下さいね。本日はお疲れ様でした。」

試験は終わりらしい。


 窓口でD級のプレートを受け取ると、嬢ちゃんと二人で組合事務所を出た。結構時間が経っていたらしく、もうすぐ夕方と言う感じだ。

「ねえおじさん。あなた採集がメインの冒険者なんでしょ?どう、私と組まない?」

おっとこの世界の女の人は積極的なのだろうか?前世を含めて初めてナンパされたよ。

「おじさんが採集している時に魔獣に襲われたら危険でしょ。私と組めば守ってあげるわ。」


 年下の女の子に守られるおじさんってどうなのと思わないでもないが、一理ある。俺が知ってる魔物ってあの穴に落っこちるウルフしか知らないし。直接戦った訳でもないし。

「だからこれから何処かでご飯食べながら相談しない?」

こっちが目的かよ。やっぱりちゃっかりしてるな。

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