第13話

 何とか丸め込んで街の中へ入れてもらった。やった。これでボッチじゃない。え?人が沢山いるところに来ても知り合いがいなければボッチだろって?君、それは言ってはイケナイ事だよ。それにさっき兵士さんとお話したから、もう顔見知りだもんね。ボッチじゃないよ、うん。


 兵士さんは俺の嘘にいたく同情してくれて、「仕事が見つからなかったら兵隊になれ。」とか、「この薬草と魔石は買い取ってもらえる」とかいろいろ説明してくれた。何でも隣国と小競り合いが続いていて、人を集めているのだとか。でも戦争やだな。平和な国から来たおっさんだよ、俺。この前死んだばかりなのに、また直ぐ死にそうな気がする。


 とりあえず現金収入を得るために買取りの方へ行ってみる事にした。どこで買い取ってくれるかって?冒険者組合だよ。テンプレでしょ。場所は聞いてきたし目立つ建物らしいので早速行ってみよう。レッツゴー。(一人だけど)

 平屋か2階建ての建物が多い中で、冒険者組合の建物は3階建てだった。大きいからよく目立つよ。もっと大きな建物が街の中心部にあるらしく、なんでも領主様のお住い(兼仕事場)との事。うん、怖いから近づかない。


 さて組合事務所の中に入ってみると、案外小ぎれいな場所だった。酒場併設なんて事もなく、生前のお役所を思わせる雰囲気だ。要件ごとに窓口が分かれているらしく、”○○受付”なんていう看板が出ている。お上りさんよろしくキョロキョロ辺りを見回していると”総合受付”と言う窓口があった。病院かデパートみたいだ。とりあえずそこで聞いてみよう。


「あのー、初めて来たんですけれど。」

まるっきりお上りさんだね。

「本日はどの様なご用件でしょうか。」

お姉さんが笑顔で答えてくれた。

「薬草と魔石の買取りをしてもらえると聞いてきたのですが。」

「買取りですね。それでは5番窓口で受け付けをしてお待ちください。」

「あと、冒険者って誰でもなれるのでしょうか?」

「受験料が掛かりますが、試験に合格すれば誰でもなれますよ。」

お金掛かるのかよ。公的資格みたいだな。

「試験は毎週1回行っています。筆記試験と実技試験がありますね。」

益々資格試験っぽくなって来たな。

「次回の試験は4日後ですので、受験されるのでしたら4番窓口で申し込んでください」

 お仕事とはいえ、お姉さんは親切に教えてくれた。お礼を言って、先ずは5番窓口で買取りしてもらう事にした。


「次の方~、ジローさんいらっしゃいますか~?」受付けしてからしばらく待っていると名前を呼ばれた。

「ジローさん、本日は何の買取りでしょうか。」

買取り担当のあんちゃんが問いかけてきた。

「この薬草と魔石の買取りをお願いしたいのですが。」

巾着袋から薬草の束と魔石を取り出してカウンターに並べた。


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