第21話 私らしくいたい
我が家でのんびりは、二日しか出来なかった。生徒会の、掃除と整理の為学園に行き、皆さんに挨拶をして書類を片付けていく。
随分と古い時代のも取ってあり、歴史だから捨てることは出来ないと他の生徒会メンバーは言った。二年生のメンバーが文化祭の中心で三年一年がサポート、二年生メンバーは今日も打ち合わせだ、来年になれば大変かもと感じた。
沢山の書類を出して、棚を拭くという単純作業だが量が多い。サリバン様が上の棚を私が下の棚を整理や掃除をしていた。
「領地、楽しかった?」
「えぇ、お父様は大変そうでしたが、私は、乗馬など新しいことが出来て楽しかったです」
「ガルバン共和国の者が領内に入ったんだろ?」
「詳しくは知らないのです、お顔も見てませんし、お父様が王宮へ連れて行きましたので」
というと少し驚いているようだった。
「話したり、発見したりしてると思った」
「いえ、私は、別室にいましたし。関わってませんよ」
やっぱりサリバン様の中でも活躍する令嬢に興味があるのだと感じた、この埋められない隙間は大きい。わかったところで積極的になるのは違うと思うので、そのままでいい。
私は書類を並べて働く。レイラ様が来て指示を出しながら、文化祭の準備として二年生が決めたアンケートを各クラスに提示する。要は、クラスで参加するかクラブで参加するかみたいなものだ。二年生的には、多く参加クラスがある方が盛り上がるという。管理するには大変だけど、意見を、出し合い調整が済むと、扉の前に一人の男子生徒が入ってきた。二年生に夏期休暇だと言われているにも関わらず、真っ直ぐレイラ様の前に来て殴りかかろうとしたところを逆に体術でかわされて、のされてしまった。
驚いた。
体格差を感じず、かわしたと思ったら男子生徒は、腹を、床について腕を捻りあげられていた。
「さすがレイラ様」
と二年生メンバーが言う。
私は驚いて声もあげられなかった。
他の三年生メンバーが男子生徒を今日いる教師の元に連れて行き、本日は解散。休暇の最終日に再度集まろうとなった。
サリバン様が馬車停留場まで、一緒で
「凄いだろ、レイラ嬢の体術。流石国軍警備隊隊長の娘だよ。彼女の側にいれば暴漢もある程度防げる」
「それでサマーパーティーの時レイラ様の側を離れるなとおっしゃったのですね」
というとサリバン様は、頷き、
「フリップの事があったばかりだったからね」
「ご配慮ありがとうございます。サリバン様はまた領地に戻られるのですか?」
と聞くと、首を、横に振って、
「フリップの手伝い。執務が溜まっているのを夏休みの間に片付けていかないと学園にも行けないみたいだからね。そう言えば、休みの最後にパーティーがあるらしいよ」
「パーティーですか?」
しかし私は、伯爵家の令嬢で参加出来るのだろうか?顔に出ていたのだろうか、サリバン様は笑って、
「サマーパーティーの代替みたいなものだから若者ばかりさ、学園の生徒が集まる」
と言った。
「表情に出てました?」
「難しい顔していたよ」
「それは失礼しました」
と言って馬車に乗った。パーティーか…
あまり嬉しくないがとりあえず、お母様には、伝えておかないと叱られてしまうだろう。
お母様に伝えるとやはりと言うべきか張り切りはじめた。
「ルイーゼ、まだフリップ王子様の婚約者が決まっておりませんよ。なんとしても一曲ダンスしてもらえるように気合いを入れなくてはね」
やはりお母様はお母様だ。
高望みと言っていいと思うのだけど、お母様は何故こうも自信があるのだろう。選ばれるぞという気構えが凄い。他の令嬢も皆そうなのだろうか?
不思議だ。
お父様にその事を、言ったら
「ルイーゼが可愛いくて仕方ないんだよ。あとゲームキャラの性格強制力なのかな。高位貴族との恋愛に何かしらの行動思考があるのかもしれないな」
とお父様の解析。
「他人事だと思って」
と言うとお父様は、
「ルイーゼも自分からサラサに気持ちを話したのかい?」
と聞かれ、首を横に振る。
何故かわからないがお母様は、こんな感じだけど、私大好きなのだ。だから悲しそうな顔も怒る顔も出来れば、見たくない。
だからってこのままでいい理由もない。
「お母様もう少し抑え目にしたいのですが」
というとお母様の目が光った気がする。目からビームって何かで聞いたことあるけど今まさにそれ。
「何故、ルイーゼ?」
「お母様、私は、伯爵令嬢です。分不相応と言いますか、あまりでしゃばりすぎる者は、折られます」
とお母様を見ては言えなかった。横を向きながら言った。お母様は、
「旦那様と同じ事を言うのね、ルイーゼはフリップ王子様とダンス踊りたくないの?」
「そうですね。お母様、覚えてますか?二年以上前のお茶会、私、つまらないって言われたんですよ。こっちだって、あなたの事などなんとも思わないわ、なんですよ」
「助けてあげたのに?」
「それはついでですし、そんな気持ちで助けてないですから」
今度はお母様の目を見て言えた。
「あちらから望めば、私の実家に養子縁組も可能ですし身分差だのそんなことは言わせませんのよ」
「お母様、ごめんなさい。私本当にフリップ王子様に興味ないの」
というとお母様は明らかに肩を落とした。
「そうなの」
とお母様は残念そうな声色だったけど、決して私を叱ることはなかった。お母様に
「私は、お母様とお父様みたいな何年も仲睦まじい関係でいられる方と結婚したいです」
というと、
「えぇ、あらあらまぁ!」
と言って照れている。それだけでわかるお母様は、幸せなのだと。
「では、ルイーゼは苦労をしたとしても自分が好きな殿方に行くということですのね」
「はい、お家に何かあればもちろん従いますが」
というとお母様は、
「わかりました。ルイーゼの好きにしなさい」
と言った。見捨てたり投げやりの言葉じゃなく、温かい激励の言葉だった。
「お母様、まだまだわからないことだらけなので教えてくださいね、ちなみに、今回のパーティーは、少し可愛い感じにしたいのです」
というとお母様は、またアクセサリーを選び直してくれる。
そんなお母様を見て、お父様のいう通り心の内を告白して良かったと思った。
お母様は元悪役令嬢かもしれないけど、今は伯爵夫人で恋愛結婚の人なのだから。この世界なかなか出来ない事をやってのけたお母様にききたい事は沢山ある。
私は、思わずお母様に抱きついた。
「お母様、ありがとう」
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