第61話 それぞれの思惑
休暇日も終わり、また練習が再開される。
試合までは残り1週間。今日から5日後に会場が決まり、その翌日に会場入りが行われる。そしてその翌日はついに試合だ。
そういったスケジュールの元、今日も練習が行われている。
まだ特訓場は使わないようだが、最近は基本的な練習だけでなく戦術的な練習も行っている。
以前と比べてチームの連携も上達していていい雰囲気だ。
そんな日々が続き、今日はついに試合の前々日。
アウラス監督と未来は会場決めのため出かけている。
今回の相手はフロージア。以前言われていた対策グッズは既に完成しているらしい。
というわけで、今回の試合はアウェイ会場(相手ホーム)でも大丈夫な状態だ。
いや、それどころか残り2戦のことを考えたら今回はアウェイ会場の方が喜ばしい。
ホームとアウェイの確率はコイントスなので2分の1。順当にいけばホームが2戦アウェイが2戦となる。
確率だから必ずしもそうとは言えないが、嫌なアウェイ会場はこういう場面で消費しておきたい。
今回のコイントスで今後の試合の有利不利が変わってくるからな。流石に緊張しているのかみんなの動きが少しぎこちない。
かくいう俺も緊張している。が、まあ別に悪いことではない。適度な緊張感を抱いて監督たちの帰還を待つ。
***
「っはー、今日も疲れたぜえ」
「もうすぐ会場の発表だな。アウェイだと比較的ありがたいけど」
「ガハハ、どっちの会場だろうと俺様が勝利に導いてやるぜえ!
「いやいや、今回だけじゃなくて次回以降に繋がってくるから会場は大事なんだって」
「あん? だからその次回以降の試合も全部俺様が勝利に導くって言ってんだろうが」
「あ、そゆことね」
頼れるというか、向こう見ずというか。
どちらにせよブラドは貴重な戦力だ。
可能性は低いかもしれないが、前回のような異常なパワーを発揮する可能性もある。
「みんな! 戻ったよ!」
大きな音をたててミーティングルームに登場する未来。
このテンションの高さは……
「アウェイ会場、獲得してきましたー!」
「「「やったー!」」」
「ないす! 未来!」
「えへへ、ま、コイントスだから何をしたってわけでもないんだからね」
「それでもないすだ! ないすっ!」
「いぇいっ!」
「さあ、会場も決まったわ。
ということで、先にこのジャージも渡しておくわね。
これも前言ってたユニフォームと同じで、温度調節機能がついてるの。明日フロージアに行ったらずっと寒い状態が続くからね。着いたらずっとこれを着ること。いいわね?」
フィロさんからジャージを受け取る。
そういえばこれまではユニフォーム以外に揃った服すら無かったからな。
このジャージで更に仲間感が強まった気がする。
「さて、明日はついに会場入りよ。
朝9時にはフロージアに着く予定だから。7時半にはここに集合ね。
朝早いから今日は早めに寝ること! 解散!」
***
ー同時刻 フロージア星ー
「と、いうわけで。無事僕たちはホーム会場での試合権を手にすることができました」
「ぴゅーーー」
「やったー!」
「流石アマトキャプテン!」
「いえいえ、単なる運ですので。皆さんの日頃の行いが良いからですよ」
「前回試合相手を潰した私たちにそれ言います?」
「はは、手厳しいですね、フリア。
しかし、あの行動も、フロージア星を思えば良い行動です。皆さん、変に気に病まないように」
「病むわけないってー!」
「勝つためだもんな! これくらいは余裕だぜ!」
「うんうん。ありがたい限りです。
さて、僕たちの作戦は順調に進んでいるように見えます。しかし、懸念点も1つ」
「懸念点? それはなんですの?」
「僕の情報網によると、裏の試合、つまりエクセラルとメラキュラの試合はエクセラルコートで行われるみたいです」
「……ああ、エクセラルに負けてほしいのですわよね」
「そうですね。
今回の試合、エクセラルは前回の僕たちの仕掛けが効いて本調子で戦えないはず。
その状態のエクセラルにホームのメラキュラをぶつけることができれば、エクセラルの敗北も現実的だったのですが……。こればかりは仕方がありませんね」
「全く、せっかくアマトさんがこんなに考えていらっしゃるのに、試合形式が酷すぎて上手くいかないなんて可哀想ですわ」
「ほんと、ゼラって酷いよなぁ。今回の作戦のせいで、俺引っ越す羽目になったし」
「その節は申し訳ありません、ソラくん」
「いやいや、アマトさんのせいじゃないっすよ! それもこれも全部ゼラが悪いんで! ほんと、ぶっ潰してやりたいっすよ!」
「ですね。
そしてここで1つ注意点」
「「「?」」」
「僕たちの特性。あの押し付けたら凍傷を引き起こすものですね。
あれは今回の試合では禁止です」
「……! 了解ですわ。
今後、オグレスもエクセラルと試合をする。そのときにオグレスに勝っていただくためにも、オグレスの選手には万全でいてもらわないと、ですわよね」
「そうですね。
フリア、しっかりと理解できているではありませんか」
「副キャプテンたるもの、当然ですわ」
(うわー、フリアさん流石だなぁ)
(やった! アマトさんに褒められましたの! これはご褒美を貰えるかもしれませんわ……!)
「さてと、では、裏の試合が懸念点ですが、僕たちはとにかく点を取るのみです。
みなさん、明後日の試合も頑張りましょう」
「「「はい!」」」
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