第37話 ギガデス代表キャプテンガロ

 後半20分、ギガデスボールで試合が再開。

 また様子見してくるかと思ったが、勝ち越された焦りからかもう一度突撃してくるゴザ。今度は仲間を5人引き連れての攻撃だ。

 しかし今回は前回とは違って仲間と一緒にではなくバラけて突っ込んできている。大体何をしてくるかは想像がつくが気付かないふりをして待ち受ける。


 「1人では僕たち6人に勝てないって学ばなかったのですか?」


 「ひゃはははは、馬鹿正直に待ち構えてくれてありがと……よっ!」


 ゴザはディフェンスの直前で味方にパスを出す。


 「はははっ! こうすりゃよかったんだ、俺に6人も使った状況で仲間を止めれるか……な……!?」


 そんなゴザのパスを俺は軽くカットする。


 「なに!?」


 「何を驚いているんだ。お前のパスくらい目線や体の動きでどこに蹴るか簡単に想像がつく。

 そんな浅はかな戦略が俺たちに通用すると思うな!」


 「ちっくしょおおおおおおおおおおおお」


 今回の作戦でディフェンスを最小限の人数に抑え残りが周りで待機していたのはパスをカットするため。予想通りバレバレなパスだったためカットすることができた。

 作戦が完璧に決まったな。


 「さあ、このままカウンターでもう1点だ!」


 相手チームが少ない隙をついてドリブルで仕掛ける俺たち。すると、今まで動かなかった大きな影が動き出す。


 「……てっきり指示出しだけかと思ってましたよ……ガロさん」


 「誰もそうとは言っていない。全て私の作戦通りだ」


 パスを出そうかと思ったが、ガロが手を上げていないことに気づく。そして味方から送られてくる揺れないの声。

 揺れない一対一なら抜ける!

 そう思って仕掛けたのだが……


 「!?」


 またもコカされる俺。何故だ、誰も"ジェイグ"の合図は出していなかったはずなのに。


 「お前は私をなめすぎていたようだな」


 「……まさか!?」


 「ああ、他の軟弱者共は複数人での協力が必要なようだが……私なら己1人の力で地面を揺らすことができる。

 よく健闘したがここまでだ、私は勝ちを確信した敵に絶望を味わわせるのが大好きなんだよ」


 そう話した後凄まじいスピードで走り去るガロ。


 「みんなーっ! 守れーっ!」


 ディフェンスが7人がかりで止めにかかるも……


 「その程度で私を止められると判断するとは……。

 心外だ、本当になめられているのだな」


 自分自身で地面を揺らしディフェンスに突っ込むガロ。7人で支えて守るも……


 「「「ぐああっ」」」


 ガロ1人のパワーに負けて7人全員が吹き飛ばされてしまう。


 「もう一度言おう、サッカーは所詮パワーが物を言うスポーツなのだよ」


 炸裂するガロのフルパワーシュート。揺れた地面に踏み込むことはできず、ヘンディはゴールを許してしまう。


 これで4-4。先程までの勝ちムードから一転、またしても暗雲が立ち込めていた。


 そして後半25分、今度は俺たちオグレスボールでスタート。だが……


 「なんだと……」


 俺たちに対抗するようにギガデスの選手、ガロ以外の全員がディフェンスに。そしてフォワードにガロ1人というフォーメーション。

 当て付けかと思ったがあのガロの不敵な笑み。そんな単純な理由ではなさそうだ。


 試合が再開すると、俺たちはガロを避けるようにパスを繋ぐ。いくらガロといえども明らかに避けているボールに追いつくことはできない。


 そうして相手陣地に切り込んでいく。ディフェンスの数が多かろうとポジショニングの悪い選手ばかり。多少パスの難易度は上がるが前回と同じようにやれば得点できるはずだ。


 そう判断した俺はパスを出す、地面が揺らされながらも見事に空中でのパスを成功させていく仲間たちだったが……


 「!?」


 その途中、ギガデスにパスをカットされてしまう。

 パスが悪かったわけではない。今までのギガデスのディフェンスなら決して奪えなかったボールだが……。


 「確かに私はサッカーの知識こそ大して有してはいないが、代わりに軍で培った戦術眼がある。どこにパスを出そうとしているのか予測するくらい私にとっては容易いことだ。あとは私の指示の元駒を動かすだけでボールを奪える」


 ガロにはヒルがマークに付いていたが、その圧倒的なパワーの前に手も足も出ず、ガロにボールが渡ってしまう。


 「まずい! 止めろーっっっ!」


 ディフェンスに残っていた選手4人で止めにかかるも、ガロのパワーは圧倒的。人数差をものともせずあっさりと抜かれてしまう。


 キーパーと一対一になり、ガロが地面を揺らそうとした瞬間。


 「うおらあああああああああぁぁぁ」


 ブラドのタックルが炸裂する。不意をつかれたガロは少しよろめくが倒れはしない。


 「ほう、お前はあの力自慢か。確かにある程度のパワーは有しているようだが……残念私には決して届きはしない」


 そのままお返しとばかりにガロはブラドにタックルを仕掛ける。


 「ぐあああああっ」


 ブラドはガロの重く強烈な一撃に耐えきれず、地面に倒れ込んでしまう。


 「そこで見ておけ」


 そして再びガロのシュートが炸裂。4-5。

 またしても俺たちは逆転を許してしまった。

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