第36話 多VS個 技術VSパワー
「な、なんだよそれええええええええっっっ!」
後半開始、俺たちは全員がディフェンスについていた。
「なめてんのか? 雑魚が何人集まろうとも無駄なんだよおおおおらぁっ!」
叫びながら1人で突撃してくるゴザ。
そんなゴザに対し、俺たちは5人がかりでディフェンスに入る。
地面が揺らされるタイミングに合わせてジャンプする。
ゴザは大勢のディフェンスにも怯まず突っ込んでくる。
「どけええええええええええええええ」
ゴザが最前線のディフェンス、アランを吹き飛ばそうと激しいチャージを仕掛ける……がアランは吹き飛ばされることなくゴザと対等に渡り合う。
そのままボールは弾かれギガデス陣へと飛ばされる。
「ちぃっ! 小賢しい真似しやがって!」
アランが吹き飛ばされなかったのは簡単な話、ジャンプしたアランを同じく後ろでジャンプした残りの4人が支えていただけ。力の強さは人数差で対応する。もちろんディフェンスの数を増やさないと対応できないから全員ディフェンスというフォーメーションにせざるを得ないのだが。
しかし、1対5でも奪いきれないとは想像以上のパワーだな。
「よし、いい感じだ。次は6人で当たろう!」
「ちっくしょおおおおおおおおお!
ふざけやがって! そっちがその気ならなあ!
お前ら! 全員で上がるぞ俺たちも全員フォワードの総力戦だ!」
予想通りギガデスは全員フォワードできたか。しかしその戦法には穴があることに気づいていないみたいだな。
それにしても気になるのはガロ。今の状況を見ても表情を変えることすらなく佇んでいる。
今までの様子から推察するに、ギガデスはガロが指示を出さない場合は個人の意思で動く感じだからこの全員フォワード作戦はガロの指示じゃないな。
ガロならこの戦法の穴に気づいていると思うが……何を考えているのかわからなくて正直怖い。
「お前らあああああああああ!
とりあえず他の奴ら全員マークしとけ! 少人数なら吹っ飛ばせる!」
ゴザの指示でマークされる俺たちディフェンス。圧倒的体格差によりマークを外すのが難しく、多少近づくことはできてもディフェンスに加わることはできない。
ディフェンスに回れたのはマークを逃れたザシャとヒルの2人だけだ。
「はーっはっはーっ! 2人じゃ止めらんねえよおヒョロがりどもがああああああああああ!
…………
あ」
気づいたようだな。ギガデスが地面を揺らすには複数人……恐らく最低でも7人ほどの同時四股踏みが必要となる。マークしながらはできないし、もしそれでも無理やりやろうとしたら……
ギガデスが無理やり地面を揺らそうと足を上げる。それを見た瞬間俺たちはマークを抜けて駆け出し、ディフェンスの加勢に回る。結果近くにいた4人が間に合い1VS6の構図になる。
「ちくしょう! 全員フォワードにしても無駄じゃねえか! くそがああああああああ」
「個人の力じゃ数の力には敵わないんだよ!」
俺たちは6人がかりでゴザから完璧にボールを奪い取る。
「くそっ! おい! 自称力自慢! 1人で負けたからって他人に頼って情けなくないのかよ!」
ゴザの煽りをブラドは無視する。
以前のブラドなら突っかかっていただろうが、成長したブラドは以前とは違う。
「今だ! 反撃!」
「くっ、しまった!」
全員フォワード作戦の影響で相手陣地には選手がほとんどいない状況。
その隙を突いて俺たちはカウンターを仕掛ける。
ギガデスは俺たちが転ぶ可能性にかけて地面を揺らすもディフェンスがいないならジャンプしてかわせばいいだけ。
「中々やるようだな」
途中すれ違ったガロがそう呟くのを耳にする。
そしてゴール前、最後の揺れも難なくかわし、将人がしっかり得点を決める。
これで3-3。作戦が上手く決まり追いつくことができた。
後半11分、ギガデスのキックオフで試合が再開。
またも俺たちは全員ディフェンスの姿勢を見せる。
しかし流石に学んだのか、今度は突っ込んでは来ない。
こうなると厄介、この戦術は自分から奪いにはいけない受動型の作戦。正直相手が勝っている時にこの状態を作られていたらピンチだった。
まあ作戦がないわけじゃない、ボールを奪う作戦に移行しようとした瞬間。
「あぁ〜、いーい作戦思いついたぁ」
ゴザが3人の仲間を引き連れてこちらに向かってくる。俺たちは即座に守りを固め、今度は8人でゴザを迎え撃つ。
「簡単な話だよなあ! お前らが数の力で俺たちを上回るなら、俺たちも数を増やせばいいだけの話。
俺たち4人のパワーは受け止められないだろおおおおおおらあ!」
連なって攻めてくるゴザたち。対する俺たちは先程までと同じフォーメーションで迎え撃つ。
地面が揺らされ飛び上がる俺たち、タイミングを合わせて突っ込んでくるゴザたち4人。結果は……
「あああん? なんでだよっっっっ!」
4人を倒し、俺たちがボールを奪う。
「簡単な話だ。動く者を押し込むのは簡単じゃない。お前たちは満足な力を込められていなかったし、何よりサッカーを始めたてのお前たちがそんな即席の戦法を使いこなせるわけがない。
対して俺たちは止まった者を支えるだけ、難易度は桁違いに簡単、そしてサッカー経験も豊富。
……お前らはサッカーをなめすぎなんだよ」
よかった。想像以上に作戦が奏功している。
奪ったボールを持って相手陣地に攻め込む俺たち。
「へははっ! でも今回はカウンターはくらわねえぜ?
どうせお前らもディフェンスを突破できねえだろうがよお! 状況は俺たちと一緒だ!」
後ろで叫ぶゴザを無視しドリブルを続ける俺にディフェンスが襲いかかってくる。
地面の揺れに合わせてジャンプした俺は、ディフェンスのチャージの前にクレへパスを出す。
「は! パス! 逃げたか! 受け取る瞬間に揺らして終いだ!」
揺れを見越したクレがジャンプする。浮いたクレを潰そうとディフェンスが突撃するが……
「遅いんだよ」
クレはパスを直接蹴り、更なるパスを出す。
「なにっ、ダイレクトパスか……! だが空中でのパスが上手く通るわけが……」
そんな相手の期待を裏切り、クレのパスは一直線にヒルへと向かう。
そしてヒルにボールが届く瞬間、今度もギガデスに地面を揺らされるもジャンプでかわし、もう一度空中でのダイレクトパスを成功させる。
「なっ、空中でのダイレクトパスを続けるなんて……できるはずが……」
「まあ確かに上手いやつ相手なら難しかっただろうな。
だけど、お前たちのようにサッカーを馬鹿にし、力を過信し棒立ちしているだけのディフェンス相手になら朝飯前だ!
これぞ技術の勝利! サッカーの奥深さを思い知れ!」
こうしてゴール前までパスが繋がり……
「初得……点っ!」
凛が空中でのダイレクトシュートを見事に決め、4-3。
俺たちはまたもや逆転することに成功した。
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