第2話

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 麻美の友人『よーちゃん』は、自称『コジキ系ゆずチューバー』である。

 大手通販サイト『ジャングルドットコム』の『ほしいものリスト』を公開して、チャンネル登録者から送られたものを使う姿を配信し、収益を得ている。

 その配信スタイルからアンチも多いが、容姿のかわいらしさと、コメントで『送りたい』と提案されたものは断らない豪快さで、そこそこの人気があるようだった。

 ある日、よーちゃんは学校の帰り、自宅のすぐ近くで見知らぬ男性から声を掛けられた。

 ナンパなら慣れたものだったが、住宅地の真ん中、人通りも少ない道に突然現れた男に、当然よーちゃんは警戒した。


「どなたですか?」


「オレ……あの、ゆずチューブの……」


 それだけで大体の状況を察したよーちゃんが「警察呼びますよ」と睨むと、男は逃げるように去っていった。

 その後、ネット上で『よーちゃん』の盗撮写真が出回っていることを知り、彼女は警察に届け出たのだが、その後の対応は麻美の言ったとおり。

 盗撮画像とは言っても、街中を歩いている姿や買い物をしている姿程度であり、事件とも呼べない。

 それどころかよーちゃんがゆずチューバーであることを説明すると、警察に「そんなことをやっているからだ」とたしなめられる始末だったという。


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