才能なしの落ちこぼれな私だけど元婚約者と結ばれるために頑張ります！！

第1話 いつかの時代どこかの場所で起きた話

　西の王国と東の帝国の間で勃発（ぼっぱつ）した戦争は、多くの命を犠牲（ぎせい）にしてもなお終わることはなく、屍（しかばね）の山を築き続けていた。両国はともに資源を食い尽くし、人口も減少の一途（いっと）を辿（たど）り、飢餓（きが）と貧困が蔓延（まんえん）し、戦争を継続させることすら困難なほどに両国の国力は衰（おとろ）えてしまった。

　両国の歴史上に人形使い（マスター）の名前が出てくるのはこの頃で、両国の戦争終結の原因となった始まりの人形使い（グランドマスター）と呼ばれた人形使いが最初である。生まれも名前も定かではないこの始まりの人形使い（グランドマスター）は両国の王にこのような言葉を残している。

『人が争うから国は衰退（すいたい）するのだ。ならば人以外のモノで争えばよいだろう』

　彼、始まりの人形使い（グランドマスター）は人形を作る技術と操（あやつ）る術を伝えると行方を眩ました。両国の王はかの技術を独自に研究し、人形同士を戦わせる代理戦争へと戦争の形を変化させていった。長い月日が流れ、戦争は決闘方式へと姿を変え、今では両国の代表が互いの人形使い（マスター）としての技術を競い合う国交試合となっている。

　国交試合という名の代理戦争を人々は人形劇と呼んだ。

■用語説明

①人形使い（マスター）

　内包する魔力（マナ）を活用して人形を繰る人物を指す

　またそれを主とした職業の総称

②始まりの人形使い（グランドマスター）

　人形劇の考案者であり、かつ人形および人形繰りの基礎技術を体系化した人物

　この世界においては偉人として扱われている

③西の王国

　アパティア聖王国。古くはアパテイア西国

　戦時中のあれこれで名前が変容していった

④東の帝国

　アタラクシャ帝国。古くはアタラクシア東国

　戦時中の……以下同文

⑤人形劇（にんぎょうげき）

　人間の代わりに人形を使って戦争を行うこと

　時代を経て試合形式へと発展していった