第11話 okie-dokie-valkyrie-ladies

 集めた戦利品を捌くため、武器屋おねーさんの所に行く。この人は中立ポジ。売ったり造ったりする立場なので何も与えられないと断られたが、他所のおねーさんからの貰い物を整備してくれるし公明正大だし好感度高い。得物の扱い方も抜群なので毎回勉強になる。客あしらいも心得てるモテおねーさんである。


「弟の、また縮んでないカ?流石にこれ以上ドレインすると冒険に支障が出るゼ。予防策用意しておくから明日また来いヨ。金と一緒に渡す」


 お恥ずかしい限りである。邪聖天使というかわいい生き物を乱用しすぎた。レベルドレインはサキュバスの性。上手く付き合っていかねばなるまい。




 次は再戦を望んだあいつ対策に、少しでも狗尾草コボルトの知識を得るため図書室のおねーさんのとこへ向かう。こちらのおねーさんは限定ポジ。貰い物をくれる条件は養育している小さい子どもたちの世話。今回は読み聞かせなどしている。蕩けるような美声でちびどもの性癖をよりハイソサエティなものにしてやるぜ。

 低年齢の子供が何故たくさんいるかと聞かれれば、そりゃ毎度毎度少年少女が来るからだ。微妙な年齢でもあるからな。仕方ない。

 このおねーさんは俺だけというわけではなく、子供のお世話でお駄賃くれたりバカデカい図書室を自由に使わせてくれたりする。魔術師錬金術士などが重宝していたと記憶している。過去生で魔術師系統だったときも、ダンジョンに潜らない日は教えたり学んだりで自己研鑽していたな。

 あれ、錬金術士のときは潜らずずっと研究と教育していた気がするな。頭良いちびっこピックアップしては助手として育てて。最終的にみんなで先鋭化して異端学派になって、そのまま禁忌に触れて大変な事になった気がするが、覚えてないな。…心のノートを覗くの怖いなこの記憶。思い出すのやめよ。


「しばらくは狗尾草コボルトの知識をプレゼントする形で良いのかな。わかったよ。じゃあ今回は、彼ら粟の民ミレットの地で生息する動物たちについて教えてあげよう」


 回りくどい知識だが、しかし文化習俗に関わる内容というのは、相手の思考心情を知る上で貴重な手がかりである。謹んで拝聴しよう。




「……そしてね、特に強力な幻獣として、かの国にはユニコーンの亜種たるショタコーンがいる。ユニコーンが清らかな乙女に心を許すように、この亜種も清らかな少年に目がない」


「恐ろしい習性っすね。じゃあ何スか。うちのビューティーみたいな清らかじゃない少年のことは怒り狂って突きまくるんすか?」


 ああ、邪聖てきな意味でな。心根は清らかなんだぜ。今も別行動で教会に聖歌奉じにいってるし。


「いいや、清らかな少年に目がなく、清らかじゃない少年にはものすごく目がない。そういう生き物だよ」


 どういう生き物だよ。なんだそれは。すんごい跪いてメロメロになるのか?怖いわ。


「だからもし粟の民ミレットの国を滅ぼす気なら、まずこのショタコーンに助力を仰ぐとよい。ビューティーちゃんくらい聖性の高い少年なら、イチコロだよ」


 狗尾草コボルトのことを知りたいとは言ったけど、何で滅ぼす方向で話し進めてんだよ。ああこの附子デーモンハーフ、国家を相手に戦うのか。って思いながらずっと教えてたのかこの人。あとうちの兄弟をそんな変態に会わせたくない。どっちも怖いわ。どういう思考回路なんだよどいつもこいつも。…回路ってなんだ?回廊?


 二度と来るかと吐き捨て、まあ、すでにしてお約束となりつつあるお決まりの文句なので、また来るのだけど。


 さて、次の場所に顔を出さねば。牧場は、もう無理だな。下手したら寝てる。訓練所に顔を出すかね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る