満点イクメン夫が子供をダシに浮気した

@hanamarusp

第1話

 それは、平日は仕事で忙しい夫の永太えいたが、育児で疲れているわたしを気遣って、息子の悠馬ゆうまを連れ出してくれた日の夜だった。

 この習慣はもうずっと続いていて、毎日帰宅も遅く疲れているだろうに、夫は嫌な顔も見せず、今日は悠馬と二人でお弁当を作り出かけて行った。

 おかげでわたしはゆっくり体を休めることができて、いつもより少しだけ片付いた部屋で、二人の大好きなカレーを作って二人を出迎えることができた。

 10月に入り、だいぶ涼しくなってきたけれど、公園で遊んだ二人は汗だくだくで帰ってきて、夕飯より先に二人でお風呂に入ったのだった。

 先に上がってきた悠馬の頭をタオルで拭いているときに、ふいに彼が言ったのだった。

「ねえ、ママ。僕とパパが遊びに行くと、必ず同じお姉さんがいるよ。パパと仲良しのお姉さんだよ」

 瞬間、自分の心臓がバクバクと音をたて始めたのがわかった。

「そうなんだねー。どんなお姉さんかなあ?」

 かろうじて笑顔を絶やさずに、わたしは訊いた。

「ええとねえ。みなこちゃんだよ」

「みなこお姉さんなのかあ。ママも会いたいなあ。…それじゃあ、ドライヤーするよ」

 ニコニコしながら伝えて、ドライヤーのスイッチを入れた。悠馬の髪に指を通しながら、今朝の様子を思い返していた。

 そういえば今朝はいつになく、張り切ってお弁当作りをしていた。偏食のひどい悠馬の食べれるものは限られている。でも今日は、悠馬の食べれないようなおかず、例えば包丁を入れて花の形にしたハムや、豚バラ肉で野菜を巻いたりしたものを作っていた。

 お弁当を作るのが楽しくなってきて、と言っていたけど…。

 まさか、女のためだったとはね。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る