AIの無神論
淡 今日平
ソーラーコア
東京帝大の理学部電子情報学科の斉藤正平は目下、博士論文の執筆に取り掛かっていた。彼の研究課題は、都市における異常気象の予測シミュレーションに関するものだったが、研究は遅々として進まない。その原因には様々考えられた。そもそも彼が取り組んでいる課題の難しさ、教授からも若干野心的過ぎると指摘されていた。あるいは、同時に取り組んでいた学会発表の準備に時間を取られていたからかもしれない。その発表の場には、気象学の権威、藤田氏が出席することになっている。彼にとって一つの晴れ舞台だ。はたまた、彼の友人に言わせれば、同じ研究室にいる別れた恋人に未だに未練があるのだろうと邪推するのだった。しかし、彼自身が意識する最大の障害は、自身のモチベーションだった。
実は、少し前から彼は、研究とは一切関係ないあるシミュレーションに夢中になっていた。202X年にIBNとGoogolが相次いで発表し、オープンアクセスとした2つの大規模量子コンピュータ。IBNのフォレストとGoogolのソーラーコアだ。二企業は競って世界中の研究室、企業に自社コンピュータの優位性をアピールしていた。その対象は正平の研究室にも及んだ。彼の研究室の教授はフォレストを採用した。変化・発展のスピードで言えばソーラーコアに分がある。しかし、こと研究者にとってはフォレストの安定性が気に入ったのだ。結果として、正平もフォレストで研究を進めていた。一方でソーラーコアへのアクセス権は宙に浮いた。今、彼はこの権限を自由に使える立場にあったのだ。そこで、一つの暇つぶしを思いついた。
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