第2話
「略奪集団!?」
「ああそうだ、とにかく豚などを部屋の内部に入れて、ドアを閉めてやり過ごせ!」
村の丘のほうに住む男性は、既に目ぼしいものを手に持ってここに避難してきたというわけだ。
農民が持っている唯一の財産といったら豚や鶏なんかの家畜だ。
これがないと冬を越せない。
「よいしょ、久しぶりにこの鐘を鳴らすときが来たわね」
女将さんはカウンターの後ろにある梯子を上り、力強く紐を引っ張る。
ゴォン! ゴォン!
「びああきつねには音がデカすぎるぅ」
ともかく、デカい音が鳴り響いて周辺に危機を知らせたのだ。
ぞくぞくと居酒屋に集まる農民たち。居酒屋とか宿屋はどこもこういう時のためにかなり頑丈に作られている。
「マダム・セロン。夕暮れにこの鐘は一体?」
「丘に住む男性が、略奪集団を発見したんだってさ。情報によると馬で引いてるけど荷物をかなり積んでいる。速度は出ないだろうね。今は夕暮れだからー、どうだろうね、明日の朝くらいに襲撃するんじゃないかしら。きつね、屋根に上って監視しておくれ」
「扱い悪いなあ、もう」
「きつねっ」
「はーい、やりますよう」
そういって私は屋根裏から窓を伝って屋根にぴょん。中では防御するためにいすなどが積み込まれているだろう。がたごと音がする。
かっこいい冒険譚なら華麗なヒーローや冒険者がここに到着するもんだが、あいにくこんな寒村にそんな人が来るはずもない。
酒場には戦士はいない。戦う専用の人はいないのだ。ここはギリギリ文明圏の寒村である。
――たた兼用で戦う亜種人は1人いる。
我々きつね族の能力はすべからく高い。
ここからでも、この暗さでも、丘を少し超えた略奪集団を【鷹の目】を使えば平気で見える。
鷹はきつねを捕食するものだから、あれですけどね、あれ。
でも熟練度上げておこうっと。
で、偵察していると略奪集団を発見。女性っぽい目と、目が合った。
わ-お。
この距離で目が合うんだぜ。
運命の出会いってやつ?
やだーもー。しっぽふりふり。
真っ赤な瞳で綺麗だなー。なんて思ってると、瞼が規則的にぱちぱちしていることを確認。
マールス信号かな? えーと……『なんとかしてわらわの腕の拘束を解いてくれぬか。さすればこんな奴らなんぞ。だそうだ』
ふーん。よほど自信があるらしい。『あなたはどれくらい強いの』
目線上に花草水月ちゃんを備え、先端部を光らせて返事をしてもらう。
考えたのは私。あたしってあったまいー。
なになに、『ハイエルフじゃからそんじょそこらの野郎どもになんか負けん』
はーうそうそ、希少種族ハイエルフがこんなところで囚われているわけ……。
ボン!
あー、なにか即座に使える魔法を使ったみたいだね。
ちっ、殴られてる。ただ、今出ていくのはさすがに不利だ。申し訳なかった。
そのあと少し通信し、敵の数も大体把握できた。大柄1匹にひょろ男4匹位だ。数名前後するだろうけどまあ間違ってはないだろう。
あの目、ハイ・エルフだな。噂には聞いていたけどあんなに深紅なんだ。
たかが戦闘員5名、でも農民しかいない村ではドラゴン襲来並みの恐ろしさとなる。
農民は戦闘なんてやったことがない。装備もない。
普通はやり過ごす。損害は出るがまた直せばよい。
ただまあ、あのハイ・エルフちゃんが気になるんだよねぇ……。
――翌朝――
やはりというかなんというか、略奪集団はやってきた。
「おまえらーよこせるものを持ってこーい! 持ってこないと」
広場でそう叫び……。
奴隷牢屋の中で生きていた人物の首が落とされる。
「こーなるぞ! わはは」
マダム・セロン。別名女将さんが居酒屋二階の窓から叫ぶ
「ここは冒険者通信網加入の居酒屋だ! ここにある資産を強奪するということは、冒険者ギルドのお尋ね者ということになるからね!」
「そこら辺の農家だけを漁れー」
そういって子分4人が散らばっていく。
――好機だな。
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