fragment of memory

愛子_aiko_

終わりと始まり

「怖い?」

「死ぬのは怖くありません。ただ、あなたと離れ離れになってしまうことが怖い。」


次々と剥がれていく世界。

この星は今、寿命の時を迎えている。

ただ、キラキラと、星は空へと還っていく。

別れを惜しむように夕暮れの紫の空の下、海が癒やしの雨のごとく優しく降りそそぎ、虹がかかる。

そのあまりにも美しい消滅の時の中、人々の魂もまた空に還っていく。


二人は静かにその最後を待っていた。

男は、カタカタと震える彼女の体を強く抱きしめる。

もうすぐ失われてしまうであろう温もり、匂い、彼女のすべてが愛おしく思えた。


「約束しよう。」


男の腕に力がこもる。


「僕達の魂がどこか違う星に生まれ落ちたとしても……僕は絶対に君を見つけ出してみせる。君をずっと守り続けていくのは僕の役目だ。」


離したくない。


彼女はその言葉で胸が温まり、いつのまにか震えもおさまっていた。

強く男を抱きしめ返す。

鍛え抜かれた体の厚み、髪を撫でる大きな手、男を形作るすべてのものを愛していた。


「私もきっと、一目見ただけであなただとわかるわ。どんな姿であっても。どんなあなたであっても。私はあなたを愛し続けるの。」



静かに破壊されていく世界。

最後の時を迎え、二人の体もまたまばゆい光に包まれていく。


さようならは言わない。

少しの間、離れ離れになってしまうだけだから。

君のその透き通った優しい瞳。

君の目を道標にしよう。

待っててね。

僕が探しに行くから。

何度生まれ変わっても、僕は必ず君にまた恋をする。


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