第23章ー少年と隊長ー9
――桜の木の下。綺麗な桜の花びらが散る中で、学ラン姿のハルバートは後輩の『ユン子』に呼び出された。
ユン子は水色頭に、二つに縛った三つ編みが似合う可愛い系の女子。彼女はセーラー服を靡かせながら、彼が来るのを桜の下で待っていた。
「やあ、待たせたな」
「ハッ、 ハル先輩……! 嬉しい、約束通りに来てくれたんですね。貴方が僕の所に来てくれるって信じてました……!」
「はははっ、参ったな。ヤボなこと言うなよ」
彼は番長の学ラン姿に下駄を履き、口に草を咥えながら鼻を指でゴシゴシと擦った。
「だ、だってハル先輩はタル校の女子の人気者だから…――!」
「クラスの学級委長のクロ子先輩や、マドンナのリオ子先輩や、ハル先輩の彼女のリナ子先輩に知られたらユン子やきもちやかれちゃう……!」
「ハハハッ。お前は大袈裟な奴だなぁ。で、話って何だよ?」
「あの、ハル先輩。突然ですが僕と付き合って下さい……!」
「え?」
「こないだ体育の時間。僕がプールで溺れた時、ハル先輩が人工呼吸してくれたじゃないですか。あれは僕のファーストキスだったんです、だからファーストキスの責任とって下さい……!」
「ユ、ユン子…――!?」
ユン子は瞳を潤ませながらしおらしく泣くと、彼のたくましい胸に思いっきって抱きついた。
『責任とってぇ!!』
『ユン子……!?』
彼女は大胆に彼に抱きつくと、女々しく泣きすがった。
「ばっ、ばか……! ここは学校だぞ!?」
「ハル先輩、キスの責任とって下さい! ユン子の大事なファーストキス奪ったのに付き合ってくれないんですか!?」
「まっ、待て! あれは人工呼吸であって、キスとはいわないぞ……!」
「そんな……!? 酷いですハル先輩! ユン子はあれから毎日ハル先輩のことをずっと想っていたのに、あんまりです!」
「ユ、ユン子……!」
慌てる彼をよそに彼女は悲しそうに泣いた。
「な、泣くなよユン子…――」
「ううっ……! だってユン子の『初めて』がこんな形で奪われるなんて。もう僕、お嫁に行けない……!」
『なっ!?』
「うわぁあああああああんっっ!!」
「こっ、こら泣くな……!! ついでに誤解を招くような、間際らしいことを言うな!」
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