第20章―消せない罪―21

「何のつもりだ兄さん…!?」


「行かせないよラファエル。兄さんの言う事が聞けないのなら、この部屋から一歩も出さない…!」


「私を閉じ込めるつもりか…!?」


「閉じ込める…――? ああ、そうだ。閉じ込めたら、お前は兄さんの言う事を聞くのか…? 手足をもぎ取り翼をもぎ取れば、お前は空を飛べない小鳥カナリアになるのか? お前を狂わせているのは一体何だ…? そんなに下界が恋しいのか…? あんな所に一体何の未練があると言うんだ!? いい加減目を覚ませっ!!」


 ウリエルは感情的になると、床から剣を拾って彼らに向けた。その瞳は狂気に支配されていた。ラジエルは、さすがに身の危険を感じると傍で話した。


「ラファエル様、お気をつけ下さい。ウリエル様は酷くご乱心なされております。これ以上、彼に刺激を与えれば……」


「ああ、そうだな……――」


「大体、何故お前がここにいる…! お前が私の可愛い弟を唆し、下界に連れ出したのか!?」



「いえ、私は決してそのようなことは…!」



 ウリエルは鋭い目付きで睨むと、彼に剣を向けた。


「兄さんラジエルは関係ない! 下界に降りたのは私の意思だ…!」



『ラファエルっ…!!』


 弟のその言葉にウリエルは、顔を歪めて怒りを露にした。


「お前は下界に降りてさぞかし良い気分だっただろ!! 兄さんがどれだけお前の事を心配したのかもわからずに、お前はソイツと下界に居たと言うわけか!?」



「ああ、そうだ。ラジエルは私を迎えに来てくれたんだ。兄さんはただ心配してただけだけど、彼は私の身を按じて迎えに来てくれた…! 兄さんとは違うっ!!」


『くっ…!』



 ウリエルはラファエルの言葉に唇を噛むと、怒りに満ちて体が小刻みに震えた。


「ふっ…ふははっ…! 僕がお前の居場所を知らなくて何故ヤツがお前の居場所を知っている…! 兄弟以上の繋がりが、お前達を引き寄せていると言うのか…――!?」


「兄さん…――」


「兄さんはそんなのは絶対に許さないぞ!生命の樹セフィロトから生まれた兄弟こそが、真の繋がりだ…! それ以上の繋がりが何処にあると言うのだ! お前は聖天使としての誇りすら失ったと言うのか…!?」


 ウリエルは深い悲しみに胸が引き裂かれると、怒りを爆発させた。そして、ラファエルに向かって両手で掴みかかって引き寄せた。ラジエルはそれを間近で見ながら戸惑いの表情を見せた。


「――同じ月日に、同じ場所で生まれた天使達。ただ、それだけの事だよ。兄さんはそれを "兄弟"と思っているだけだ…!」



 ラファエルは胸ぐらを掴まれたまま、彼を上から見下ろした。その瞳は凍りのように冷めていた。ウリエルはその言葉に頭が打ちのめされると、カッとなって思わず顔を拳で殴った。



『この愚か者めっ!!』



 ラファエルは殴られると地面に倒れた。ウリエルは、最愛の弟を拳で殴ると激しい怒りに震えながら佇んだ。


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