第20章―消せない罪―14
肩越しに置いた手をラファエルは、その手の上に自分の手を重ねた。2人は無言でみつめあった。
「貴方は残酷な人です…。そして、そんな貴方が私はとても…――。それが貴方の罰なら、私はどんな罰も受けます。消せない罪を犯した以上、私は貴方に傷つけられても構いません。それで貴方の気がおさまるなら、何度でも傷つけられたって平気です」
「ラジエル……」
彼のその言葉にラファエルは心が揺れた。それは遠い記憶に埋もれた愛の断片を思い出すかのように――。
「ッ…!」
「どうした…?」
「いえ、先ほどの戦いで肩を少し痛めたものですから……」
ラジエルはそう話すと、左肩を手で押さえた。
「なら診せてみろ。私は戦う事が出来なくても、お前の身体を治療することは出来る。私は医者だからな…――」
ラファエルはそこで何かを思い詰めると瞳をそらした。彼に促されると左肩をみせる為に、着ている上着を少し脱いで左肩の傷を見せた。上着を少しはだけさせると、凛々しい肉体をさらけ出した。無駄のない筋肉に引き締まった身体が彼のギャップを伺わせた。ラファエルは彼の肉体に右手で触れると懐かしそうな顔で撫でた。
「…変わらないな――」
ラジエルは彼に身体を撫でられると無言で、下をうつ向いた。
「…そうですか?」
「ああ、あの頃のままだ……」
左肩に触れると身体の状態を確かめた。触診しながらラファエルは彼に話した。
「どうやら左肩の方に少しヒビが入っているようだ。この辺とか痛むだろ?」
「ええ、少し……」
「治癒魔法で治してやるからジッとしてろ。いいな?」
ラファエルは彼にそう告げると、負傷した場所に手を翳して治癒魔法を唱えた。
「い、いけません…! そのような事で私に治癒魔法を使っては…!」
ラジエルは咄嗟にあることを口走った。すると彼は冷静な眼差しで彼を見つめた。
「いいのだこれくらい…。これが私の役目だ。これが私の存在理由だ。お前は気にしなくてもいい…――」
『で、ですが…!』
「そもそもお前を巻き込んだのは私だ。私に責任がある。私がこんな所に来なければ、お前は戦わずにすんだ……」
「ラファエル様…――」
そう呟いた彼の横顔が、どこか悲し気に見えた。治癒魔法で左肩の傷を直すと、肩の痛みがひいた。かわりに温かな温もりを感じた。治療を終えると、その手を退かそうとした。するとラジエルはその手を掴んで握った。
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