第20章―消せない罪―4

 

 全ては神秘の謎を解き明かす為だった。そして、それを解き明かす為、私はあの時代と共に流された。



――きっかけは前触れもなく訪れた。



 あの頃の人間達は、戦いで他の種族を捕獲しては人体実験を行っていた。私はそれを天から眺めて彼らを批判した。そこで私はある事が脳裏に過った。それは解剖ではなく、ましてや人体実験でもなかった。


 もっと違う理由だった。一言で言えば、あれは単純な思いつきで始まった。それがのちに私をここまで深く、苦しめるとは思いもしなかった。自分にとって、それをすることは言わば愚かな行為でしかない。そして、それをすることにより大きなリスクがあった。


 私のすることは兄弟の裏切りと呼べる行為。まして、それが簡単に許される訳でもない。彼は私を愛していた。同じセフィロトの樹から二番目に生まれた「弟」として、彼は私を心から溺愛した。その特別な関係が彼の心をあそこまで歪ませた。それを知られたら、彼が私を許すこともないだろう。そう解っていても、私は自分のその好奇心を抑えられなかった。彼がそのことを知った時は、もう全てが手遅れだった。私は今も彼のあの瞳を忘れないだろう――。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る