第18章―虚ろな心―18

「私が奴をどうやって殺したか聞きたいか? いや、それが知りたくて私の所に来たんだろ。違うか?」


 ギュータスはその事を聞かれると、視線をそらした。


「俺は別に、ただ……。アンタが何で奴をあんな風に殺したかわからねんだよ」


「なんだお前。私が怖いのか?」


「さあな。でも、何であんな風に殺したか気になる。昔、あいつと何かあったのか?」


 ギュータスは言葉を濁してその事を尋ねると彼の表情は一瞬変わった。そこには彼の闇が見えた。クロビスは突然キレると、テーブルの上にあるワイングラスを持って投げつけた。


「うるさい! 貴様には関係ないだろ! 貴様もあいつみたいに私に殺されたいか!?」


 クロビスギュータスに向かって怒りながら叫ぶと、敵意を剥き出した。ジャントゥーユは彼の怒鳴り声に驚くと首輪をつけたまま部屋を飛び出した。クロビスは怒りながら鞭を振り上げた。


『この私を不愉快にさせるとはそれが下僕のする事か! おのれぇっ!!』


 彼は怒りながら鞭でギュータスを容赦なく叩いた。そして時おり激しい罵声を浴びせた。クロビスは怒りがおさまると鞭を床に投げ捨ててソファーに座った。ギュータスは床に跪くと両手をついて頭を下げた。


「わっ、悪かった…! もう聞かねえから鞭で叩くのはやめてくれ…――!」


 彼はそう言って頭を下げて謝った。クロビスは頭を下げる彼を上から見下して唾を吐き捨てた。


「どうだ。私は怖いか?」


 クロビスはそう言って彼の顎先を足の先でクイッと上に向けた。椅子から見下ろす姿は、冷酷な美しい女王のように見えた。足の先で顎をクイッと上に向けられると、ギュータスはその支配感に酔しれた。


「ああ、アンタを見るだけで心底ちびっちまいそうだ。アンタはここの女王様だ。冷血で残忍で冷酷な仮面をつけた恐怖の女王それがアンタだ――。ここではアンタの支配に、誰もが跪ずくぜ」


 ギュータスはそう話すと、彼の白い素足に堪らずキスをした。クロビスはその言葉に不敵な笑みで笑うと優越感に浸った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る