第17章―天上の刃―7

 

「――それは隊長としての仲間を思う言葉だ。お前にとって彼らは只の部下達でしかないが彼らも一人の人間だ。私はお前に人を思いやる心を思い出して欲しいと思うのだ。私がお前に言いたいのはそれだけだ。あとは自分で考えるがよい」


 リーゼルバーグは、人としてその時にどうあるべきかの例え話を彼に語った。ハルバートは彼の話しに唇をぎゅっと噛み締めると、下を俯いて口を閉ざした。


「チッ、これだからジジィの説教は嫌いなんだ。 俺に説教をするんじゃねーよ!」


「お前にはまだわからなくても、そのうちわかる時がくるだろう。なにせ私は、説教好きの年寄りだからのう。私からみれば、お前達は青いヒヨッコばかりじゃ、私は楽しみなのだ。お前達がどうやって成長して行くかを――」


 隣で思った事を呟くと、そこでフと笑ったようにも見えた。ハルバートは呆れると隣で頭を抱え込んだ。


「さて、手当ても済んだことだし。私は退散する」


 急箱を手に取ると、部屋の手口へと向かった。ハルバートは、ベッドの上で横顔を向けたまま、瞳をそらして黙り込んだ。リーゼルバーグはドアノブに手をかけると何気なく話した。


「そうだ。怪我をした隊員達は皆、治療を受けたあとに病棟の方へと移された。時間がある時に見舞いにでも行ってやれ。駄目な部下達でも、あいつらは隊長のお前を慕っている。お前が顔を出せば、彼らも元気がでるだろう」


「リーゼルバーグ…――?」


「お前は私と違って、彼らとは身近に生活をしている。ここに来て良い部下達に恵まれたな。その絆、大切にしとくが良い」


彼は扉の前でそう告げると部屋から出て行った。ハルバートは彼に言われた一言に考えさせられた。


「チッ、相変わらずお節介なジィさんだぜ……。やっぱりアンタには敵わねぇよ…――」



 ハルバートは彼がいなくなると、ベッドの上で横になって考えた。そこに誰かが、部屋のドアをノックした。


「ったく、人が休んでる時にうざってぇな。入りたきゃ、勝手に入って来い!」


 少し苛立った声で返事をした。その返事に誰かが扉を開けて入って来た。彼はそこで扉の方に目を向けると、部屋に入って来たのはリオファーレだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る