第17章―天上の刃―2

 

「おいテメェらこれは何のつもりだ!? いきなり奇襲攻撃とは良い度胸してるじゃねーか! 鳥人族ファルクが俺達、人間族ヒューマに一体何の用だ!?」


 ハルバートは敵意を剥き出した。バンダナを巻いた男は鋭い眼光で睨みつけながらジッと動かずに佇んだ。男は質問には何も答えずに再び手で合図を送った。部下達は弓矢を引くと真下に向かって攻撃を仕掛けた。真下にいた竜騎兵達は、再び弓矢の的になった。天から降り注ぐ弓矢の嵐に多数の者が負傷を負った。


 ケイバーは前に居る隊員に向かって物陰に隠れろと命令した。彼を乗せた隊員は弓矢をかわしながら、近くの森に向かって降下した。ギュータスは果敢にも、斧で弓矢を弾き返して防御姿勢をとった。リーゼルバークはこの状況に対して、守りに入ることに専念した。鳥人族は彼らに向かって容赦なく攻撃を仕掛けた。ハルバートは彼らの横暴な態度に腹をたてると、斧を大きく振りかざして稲妻の雷撃を撃ち放った。


竜奥義、爆風雷撃破弾光りゅうおうぎ ばくふうらいげきはだんこう! 鳥野郎どもこれでも喰らえぇええっつ!!』


 ハルバートはヴァジュラに合図をおくった。竜は彼のかけ声と共に翼を大きく広げると、一瞬で強風の風を扇いだ。斧に雷の力が集まると、彼はその斧を振りかざして彼らの方に向けて放出した。強風の風に雷の力が加わることで、周囲に爆風とイカズチの輪が駆け巡った。風の力で彼らは弾き飛ばされると、続いて雷の嵐を浴びた。弓矢を持っていた部下達は、感電して即死した。空からは雷を浴びた彼らの死体が次々に真下に向かって落ちていった。ハルバートは周りにいた敵を次々に蹴散らすと、そのままバンダナを巻いた男の方へと突撃しに行った。


『でやああああああああああっっ!!』


 けたたましく叫びながら果敢にも一人で立ち向かった。斧を振り上げると、男は長い槍で攻撃を受け止めた。その瞬間、二つの力がぶつかり合った。男は槍で攻撃を防ぐと薄笑いを浮かべた。その男の瞳は獣のような鋭い瞳だった。幾多の戦いにおいて研ぎ澄まされたその眼光は見る者を恐怖へとのみ込むような、ただならぬ威圧感を放っていた。刃を交えた瞬間ハルバートは本能で何かを悟った。それは、いきなり奇襲してきたこの男がただ者ではないと言う直感だった。男は槍で攻撃を防ぐとニヤリと笑った。


「νπρησχ、ъпсеκικικι……」


 男は人間にはわからない種族の言葉を話すと再びニヤリと笑った。ハルバートはその男の薄笑いに腹をたてると、再び攻めた。


「このクソ野郎、意味のわからねえ言葉を話すな!」


 怒り任せに斧を振り上げると、男は槍で攻撃を弾き返した。


『ζЙйЁЁΛπππππιιιι!!』


「な、何ぃっ…!?」


 瞬時に何かを唱えると槍の先から光の光線を放った。その眩い光にハルバートは思わず目が眩んだ。


『ウワァアアアアアアッッ!!』


「ハルバート…――!」


 リーゼルバークはその様子を下から見ると直ぐに駆けつけようとした。すると彼の目の前に、背が高い男が立ちはだかった。男は彼と同じく背中に翼がはえていた。片目を閉じた男は目の前に立ちはだかるとそこで突如雄叫びをあげて化身してみせた。その姿は人の姿ではなく、鳥の姿だった。大きな鷲の姿に変身すると、鳥に変身した男は攻撃しにかかった。鋭い大きな爪が襲いかかると竜は咄嗟に氷結界でガードした。鳥は攻撃を防がれると、今度は体当たりして突撃しにきた。体当たりしてくるたびに氷結界には僅に亀裂が入った。


「クッ、鳥人族ファルクの奴らめ……! 手加減なしにいきなり襲いかかるとは、なんて奴らだ! あいつらは一体――!? このままでは、奴らに全滅させらてしまうかも知れんぞ!」


 リーゼルバークは攻撃を防ぎながらも、冷静に状況を見極めようとした。雪が舞い落ちる中、彼らは戦うことを余儀なくされた。竜騎兵達は突然襲いかかってきた敵に奇襲攻撃を受けると隊列は見事に崩されて、敵に翻弄されたのだった。剣や槍を持った複数の男がギュータスやケイバーの方にも襲いかかった。彼らはそこで攻撃を防ぎながらも反撃した。


「チッ、火の鳥の次は鳥野郎だと!? クソッタレ! こうなったら返り討ちにしてやる!」


 ギュータスは予備の斧を手に持つと、ハチェットを勢いよく投げつけた。投げつけた斧は敵の頭に命中した。剣を持った男は、そのまま下へと落ちた。


「ケッ、ざまぁみろ!」


 その場で一人倒すと次にもう一人を斧で倒した。森に隠れて様子を伺っていたケイバーの方にも、槍を持った男が襲いかかってきた。彼は頭を使って裏をかくと先回りして敵をボウガンで射ぬいた。


「ケイバー様を舐めてもらっちゃ困るぜ! どこの連中だか知らねーけどな! 襲いにかかってきた事を死ぬほど後悔させてやる!」


 彼はボウガンに矢を込めると、森の中から上に向かって狙い打ちした。


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