第14章―魂の在りか―9

 

『うぎゃあああああっっ!!』


 青竜刀を持った男を切り捨てると、さらに次に2人の男が襲ってきた。アレンは剣を振ると前に構えた。その姿は勇姿に満ちあふれていた。


「命を投げ捨てるとは愚かな…――!」


「うぉおおおおーっ!!」


「ハァアアアアーッ!!」



 2人の男が斧を振り上げて襲ってくると、彼は迷わずに剣を振った。その瞬間に勝負はすでに決まっていた。2人の男はアレンの前で切り捨てられた。そして辺りには血飛沫が飛び散った。シュナイゼルは後方からくる山賊達相手に果敢に戦うと次々に切り捨てた。鎖鎌を持った男が空中で武器を振り回しながら攻撃を仕掛けてくると、ジークフリードはその攻撃をかわした。


「なっ、なにぃ……!?」


「バカめ、そんな攻撃が私達に通用すると思ったか! 私とジークフリードは、一心同体だ! ヤァアアアアアアッ!!」


 けたたましく叫ぶと、アレンは剣を振り上げて男の右腕を切り落とした。


『ぐわぁあああああああっっ!!』


 その瞬間、再び血飛沫が飛び散った。右腕を失った男は地面に倒れると悲鳴を上げて怖じ気づいた。


「ひぃいいいっっ!! たっ、頼む……! 殺さないでくれっ!!」


「貴様、何を戯けたことを…――! そう言って命乞いをしてきたか弱き者達をお前ら蛮族は、ためらわずに命を奪ってきた癖に何を抜かすっ!!」


 アレンは倒れた男に剣先を向けると、氷のように冷たい瞳で男を見下した。


『ひぃいいいいいいっ!!』


「言え、誰に雇われた!? お前らみたいな山賊が、易々と王都に入り込めないはずだ! 手引きは誰だ!? 何故、我々を襲った!?」


「し、知らねーよ……! 俺達はお頭にあんたらを始末しろと、ただ命じられただけだ!!」


「――言わない気か? なら、これよりも酷い苦痛を与えるぞ?」


『だから知らねーって言ってるだろっ!!』


 男が怒鳴るとアレンは剣を真上に振り上げた。すると突如、彼らの足下に赤い玉が投げ込まれた。


「むっ、アレン避けろっ!!」


「クッ!!」


 投げ込まれた赤い玉は突如そこで爆発した。突然爆発すると周りは一瞬で炎に包まれた。片腕をなくした男は、一瞬で炎に全身が包まれた。アレンは間一髪のところを回避した。男が焼け死ぬと、生き残った山賊達は慌ててその場から逃走した。


「いっ、今のは一体……!? くっ、おのれ山賊ども、逃がすか!!」


『追うなアレンっ!!』


「しかし…――!」


「深入りは禁物だ。どのみちあいつらは討伐しなくてはならない。だだ一時、命が延びたにしかすぎん」


「わかりました。では貴方に一つお聞きします。貴方は何か知っていますね? それにさっき貴方は……」


 アレンは剣をおさめると、シュナイゼルに話しかけた。彼は黙って懐から銀のボトルを取り出すと、お酒を一口飲んでから話を切り出した。


「ああ、襲撃があるのは事前に知っていた。だが、本当にやつらが襲撃しに来るとは思わなかった」


「それはどう言うことですか?」


「――それは今朝のことだ。我々が王都に入る前に近くの山で夜明けを待って休んでいた時だった。私はある者に呼ばれて、あいつらが襲撃を企んでいる事実を聞かされた。それがどこで行われるかは不明だったが、我々が王都に到着したら襲撃されると奴は言った。まるで予言者みたいな口振りだった。私は半信半疑だったが、まさかその通りに起こるなんて信じられんかった」


「シュナイゼル団長、その者は一体……?」


「さあ、私にもわからん。だが奴は黒い羽を纏って空から突然現れたんだ」


「黒い羽……?」


「ああ、まるであれは天使みたいだった。そうとしか言い様がない」


「天使…――。にわかに信じがたい話です」


 アレンは神妙な顔で壁に寄りかかると、両腕を組んで話を聞いた。


「奴はこうも言った。襲撃されるのは我々騎士団の全員ではなく、その中の誰かだと――」


「そ、それはつまり……!?」


「私とお前の命を奴等が狙っていると奴は言ったのだ…――!」


「なっ、何ですと……!?」


 アレンはそこで衝撃を受けると言葉を失った。


「何故そんな大事なこと教えてくれなかったんですか……!?」


「言っただろう、半信半疑だったと。名前も知らぬ者からの話を易々と聞き受けられるほど私もバカではない。何かそれには別の意図があると思ったんだ。だがしかし、予言は見事に的中した。それどころ本当だったのだ」


「シュナイゼル団長…――」


「やつはこうも言った。その時が起こるのは我々が2人になった時だと――!」


 彼はそう話すとボトルを持った手が震えた。その様子にアレンは息を呑んだ。



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