第10章―決着の行く末―2

 

 投げつけた手斧が命中すると彼は地面にボウガンを落とした。ハルバートは睨み付けながら威圧した。


「生憎だがそうはさせるか。何でもかんでもブッ殺せばいいってもんじゃねー。ちったぁ学習しな、こっちにも聞きたいことがあるんだ。それでもやるなら俺がとことん相手になってやる!」


 ケイバーはそこで鼻で笑うと、悪人のような顔つきで背後を振り返った。


「やってくれるじゃねーかハルバート。お山の大将さんも本領発揮って処か? クククッ。いいぜアンタのそう言うところ、俺は好きだぜ? 相手になってやるって言ったな? おもしれぇ、それでこそ漢ってもんだ。でもなあ、今はお前とやりあってる暇はないんだよ! こんなところでお遊戯なんかしてられっか! 奴をぶっ殺すって決めた以上、誰にも邪魔はさせねー! それにこいつに拘って何の得がある!? バカな囚人が一人、脱獄しただけだろ!」


 ケイバーは囚人の方に目を向けると、殺気だちながら怒鳴った。


「カリカリしてるテメェもどうかしてるんじゃねーか? そのバカな囚人に俺は用があるんだ。だから質問する前に勝手に殺されちゃあ、こっちが困るっつてんだよ!」


 ハルバートはそう言って言い返すと、拳を鳴らして威嚇した。


「ハン、質問するも何もこいつは只の囚人だ! オーチスの馬鹿野郎がこいつを牢屋から逃がしたおかげで、俺は朝からクロビスのトバッチリ受けて大迷惑してるんだ!」


 彼は怒鳴りながら言い返すと、今にも囚人を手にかけそうな勢いだった。囚人は鬼の形相で睨まれるとそこで足下を怯ませた。


「挙げ句の果てにはこの寒い中を外の捜索に回されて、散々な目に遭わされたってぇのに囚人をわざわざ生かして捕まえろだぁ!? どいつもこいつもふざけたことぬかしてんじゃねぇ! そんなのは今さら聞くまでもねーんだよ!」


 感情を剥き出しにすると、ケイバーはポケットから鋭いナイフを取りだした。そして、それを右手に構えると囚人の方に向かって襲いかかった。ハルバートは咄嗟に前に立ち塞がると、彼の右手を素早く掴んでナイフを持っている手を力で押さえ込んだ。


「チッ、この狂犬が……! てめぇは血の気が多すぎるんだよ!」


 ナイフを持っている手を押さえ込まれると、ケイバーは睨みながら呟いた。


「いいぜ、上等だ! タイマン勝負してやる! 今のでカチンときたぜ!」


 ケイバーはすかさず右手を振りほどくと、そのまま宙返りして体勢を戻した。そして、ナイフを右手に翳すと舌でベロリと舐めて猟奇的な顔つきで笑った。


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