第9章―ダモクレスの岬―15
「くっ、雷の矢はもうダメか……! なら、これでどうだ…――!」
そう言って背中に背負っている矢の入れ物から違う矢を取り出した。火の鳥は一瞬足止めされたが、ユングの方に再び向かってきた。火の鳥が自分の方に勢い良く急接近してくると、彼は焦りながらも素早く弓矢を交換した。
「父さんが僕に残してくれた形見の矢の1つだ! これは雷の矢よりも、さらに強力なやつだ! 父さんの雷鳴の矢を受けてみろぉーっ!」
ユングは大きな声を出して叫ぶと雷鳴の矢を勢いよく放った。飛ばされた矢は空を貫き、火の鳥にめがけて鋭く突き刺さった。そして、突き刺さった直後に、再び頭上から雷が打ち落とされた。頭上から雷が落ちてくると、そのまま火の鳥に向かって激しく命中した。ユングは思わず心の中でやったと呟いた。そして、大きなダメージを与えるために、再び弓から雷鳴の矢を射ち放った。
『喰らえ! 連撃だぁあああああああああっ!!』
そこで叫ぶと素早く雷鳴の矢を続けざまに3回、勢い良く矢を射った。連撃で繰り出された雷鳴の矢を喰らった火の鳥は、全身に大ダメージを受けて、そこで瞬く間に感電した。動きが止まった所で咄嗟にユングは彼に声をかけた。
「リーゼルバーグ隊長、今です…――!」
「うむ、よくぞやった! それでこそ私の部下だ! さあ、リューケリオンよ、もう一度あやつに氷結ブリザード・ブレスを喰らわせてやれ!」
竜は力強く雄叫びを上げると、左右の翼を大きく広げて真っ直ぐに突撃した。そして、勢いよく口から氷結ブリザード・ブレスを吐いて吹きかけた。火の鳥は感電して行動不能に陥ると、反撃する隙もないままに、空中で氷づけにされた。リーゼルバーグは再び剣を構えると、剣に秘められている力の封印を解いて発動させた。力を発動させると同時に剣は、蒼炎を纏うように蒼白く光輝いた。
「幾多の戦いで磨かれた我が剣を受けてみよ! 人を斬り、魔族を斬り、竜や魔獣も切り捨てた我が剣は、今では精霊さえも殺せる強力な力を持つのだ!」
リーゼルバーグは己の剣に秘められている力を解放すると、火の鳥に向かって躊躇わずに突進した。剣は忽ち蒼炎の焔に包まれながら、ただならぬ妖気を放ちながら妖しく光輝いた。
『喰らうがいい!
蒼炎に包まれた剣は、氷づけにされた火の鳥を胴体ごと一瞬に宙で真っ二つに切り捨てた。そして、蒼炎の剣を右手で再び振り下ろすと、火の鳥の首を切り落としてトドメを刺した。鮮やかな舞いは蝶のように美しく、そして、優雅な剣の太刀筋はただならぬ圧倒的な強さを見せつけたのだった。火の鳥の幻影は、彼の剣によって倒されるとその場で術は解けて跡形もなく弾け飛んだ。
「塵は塵となって還るがよい――!」
彼は火の鳥を打ち倒すと、腰に剣を納めた。ユングはリーゼルバーグの強さを間近で見ると、凄く興奮した様子で駆けつけた。
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