第9章―ダモクレスの岬―6
「捕まえるってどうやってだ? 風が邪魔して前に進めないのにそれを無理矢理突破しようってワケか?」
「ああ、そうだ!」
「じょ、冗談だろ? さっきそれでお前の部下の2人が無理矢理前に突破しようとして風の中にのみこまれて死んだばかりだろ!? それにあれはただの風じゃないんだろ!? 魔法石の力なんだろ!? 俺は冗談じゃねーぜ! 風にもみくちゃにされた挙げ句、虫みたいに地面に叩き潰されて死んでくのはゴメンだ! たかが囚人ひとりを追いかけるだけなのに、自分の命を差し出すんなんて真っ平ゴメンだぜ! 死にたかったら自分だけ死んでこい! それに、あの魔法を突破するなんて本当に出来ると思ってるのか!?」
彼の質問にハルバートは真っ直ぐに答えた。
「ああ、出来るさ! 部下達が乗ってる竜じゃ、あの魔法の力に耐える事は出来ないが俺の竜とリーゼルバーグの竜ならあの風を突破することは可能だ!」
「おいおい、マジかよ? 本気で言ってるのかお前、正気か……!?」
ケイバーはおもわず、顔をひきつらせながら半笑いを浮かべた。気乗りしない彼とは裏腹にハルバートはヤル気満々だった。
「ここまで来て取り逃がしたらお前だってまずいだろ? 坊っちゃんに何て報告する気だ?」
「チッ、くそっ……! 今日に限って貧乏くじだぜ! お前の竜に乗ったのが、そもそも間違いだった!」
そう言って話すとケイバーは呆れた表情で深いため息をついた。2人で会話をしていると、後ろからリーゼルバーグが慌てて駆けつけた。
「おい、ハルバート! あれはただの風ではないぞ! あれは魔法石のオーブの力だ! うかつに近づけば命とりになる!」
リーゼルバーグが焦りながら駆けつけると、ハルバートは返事をした。
「ああ、その通りだリーゼルバーグ! あの逃げた囚人の野郎は、よりによって魔法石のオーブを持ってやがる! しかも中級呪文の魔法がかけられいるオーブだ! 他にも魔法を隠してるかも知れないぞ!?」
2人はその場で状況を確認しあった。
「俺のヴァジュラとお前のリューケリオンなら、あのを術を突破できる! 他の部下達はここで待機させるしかねぇ!」
「ああ、そうだな! 部下達はここで待機させるのが賢明だ! さほどの力しか持たないワイバーンでは、あの術を突破することは無謀すぎる! 下手すれば、ニコラスとロジャーズのように死人が増えるだけだぞ…――!」
「ああ、だから俺達で突破するしか方法はねぇ! おい、覚悟はいいか!?」
「ああ、のぞむところだハルバート!」
2人は意気投合すると強行突破を決意した。ハルバートは部下達に待機の命令を下すと、2人で突破する作戦を部下達に伝えた。部下達は命令に従うと、その場から引き下がって安全な所に移動した。2人が躍起になっているとケイバーは思わず尋ねた。
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