第8章―吹雪の中の追跡―2

「ジャントゥーユが来たって事はクロビスの命令を聞いたか?」


「ああ、聞いた。囚人が一人脱走したそうじゃねーか? あの坊ちゃんが俺達に命令を出すなんて、よっぽどなんだな。おかげでこの寒い中ダモクレスの岬まで出動だ」


 ハルバートはそう話すと可笑しそうに笑った。


「あいつも焦ってたようだからな、そう言われるとそうかも…――」


 ケイバーは相づちをして返事をした。


「で、そう言うテメーらはどこに行くんだ?」


「お前らと同じところだ。気にすんな」


「なるほど…ダモクレスの岬ってわけか?」


「ああ、俺達もクロビスに頼まれてそこに向かうところだ。なあハルバート。俺達も乗せてってくれよ?」


 そう言って話を持ちかけると、ハルバートは直ぐに断った。


「ハン、冗談じゃねぇぜ。なんでお前達を連れて行かなきゃならねぇんだ? 俺は看守がでぇっきれぇーなんだよ!」


 彼はそう話すと不機嫌そうな表情で地面に向かって唾を吐いた。


「なんだとこのジジイ……!」


 ギュータスは突然切れると怒鳴った。するとケイバーが隣で制止した。


「やめとけギュータス。今は争ってる暇は俺達にはないんだ。こんな所で騒いでたら寒さで体力がもたないぜ。ここは俺に任せて大人しくしてろ!」


 ケイバーは彼を説得させると、その場で引き下がらせた。



「――少しは分かってるみたいだな。話がわからねーヤツより、話がわかる奴の方が俺は好きだぜ?」


 ハルバートはそう話すと呆れた顔で鼻で笑った。


「確かに看守は好きじゃねーが、お前は別だ。仕方がないから一緒に連れ行ってやる。俺達に感謝しろよ?」


 彼はそう話すと自分の後ろにケイバーを乗せた。


「乗れよ、俺の気が変わらないうちにな!」


「恩にきるぜハルバート! やっぱりお前はそこら辺にいる奴らより、頼もしいぜ!」


 そう言ってケイバーが誉めると、ハルバートは豪快に笑った。


「そこら辺って誰のことだ? もしかしてリーゼルバーグのことか?」


「ああ、そうだとも。ヤツは石頭で話が通じねー。それどころか俺を毛嫌いしてやがる。副隊長よりも隊長らしいのはアンタだ」


「当然だろ? 俺は竜騎兵の隊長なんだからな!」


 2人がひそひそ話をしていると、リーゼルバーグが近くから声をかけてきた。


「何をやっているハルバート! まさかそいつらも連れて行くきか!?」


「うるせぇよバーカ! 俺様が連れて行くって決めたら連れて行くんだ! お前は大人しく引っ込んでろ!」


 彼がそう言い返すとリーゼルバーグは、不満げな顔で引き下がった。


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