第7章―闇に蠢く者―7
「たとえ光の剣であっても長い間あの闇の中に囚われていれば、たちまちその聖なる光は失われます。ましてや、悪魔の王を剣で封じ込めるとなればどれだけの負荷が剣にかかるかは、我々には想像できません。恐らく、剣は悪魔の王の力に負けたのです。悪魔の王の力は巨大です。たとえ体を封印されても、その力が衰えることはありません。サタンは長い間時間をかけて自分の体を封じた剣に語りかけ、呪いの言葉をかけ続けたのです。そして、剣は悪魔の力に破れて聖なる光を失い、サタンの体から剣が抜け落ちたとしか考えようがありません…――!」
「何を戯けたことを……! 悪魔の王はあの時、ミカエル様の手によって死んだんだ!」
カマエルが激昂しながら言い返すと、彼は反論した。
「貴方もご存知なはずです。悪魔の王の力の恐ろしさを……! すべてにおいて完璧なサタンだったらそれくらいやってのけてもおかしくありません! ましてや神の愛を誰よりも受けた彼なら、我々よりも遥かに勝っている事は確かなはずです! ミカエル様に倒された時に、その肉体と精神を時切り離したのであれば十分に考えられます……! そして、光の剣から時放たれた彼の肉体は、今では主の帰還を待つばかりの"器"になったのです……! おそらくですがサタンは肉体を取り戻しました。ですが、精神は肉体に帰れずに今はさ迷う魂だけの存在かも知れません。だからあの時サタンは、扉の前でミカエル様が来るのを待ってたのです…――!」
「黙れぇっ!」
カマエルは息子の真に迫る言葉に驚きを隠せないでいると、思わず怒鳴り声をあげたのだった。
「ミカエル様に対しての屈辱的な言葉の数々に、私はお前を我が一族の恥だと思うぞ!」
「いいえ父上、私はそうだと疑っています……! だからあの時ミカエル様は扉の前でお倒れになったのです! そして、剣は彼の体を貫抜いた時に、あの様なおぞましい呪われた剣へと姿を変えていたのです! クラウ・ソラスはサタンの強力な力で呪いをかけられ、サタンの手により神殺しの剣になって生まれ変わったのです――!」
その瞬間、息子のある言葉に彼は突然、雷に打たれたかのような大きな衝撃を受けた。
「神殺しの剣だと……!? バカな、その剣の名前を口にするではない! 口にすればたちまち呪われるぞ!」
カマエルはそう言いと、酷く血相をかいて慌てた様子だった。
「――まさかクラウ・ソラスがサタンの忌々しい力によって神殺しの剣に生まれ変わるとは……! もはや、光の剣は闇に落ちたと言うわけか。なんて恐ろしい事実だ……! 剣が主を裏切る等とは、決してあってはならないことだ!」
余りの衝撃に彼は取り乱したようにブツブツと一人言を呟いた。そして、我に返ると不意に尋ねた。
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