第7章―闇に蠢く者―4

「お前は何故、そのような事を知っている?」


「ハラリエル様が私にお教えて下さったのです――」


「なんと、それはまことか……!?」


「はい。ハラリエル様の瞳には、この世界が崩壊して滅亡してゆく姿がお見えになったのです。そして、他にも幾つかの予言をなされました…――!」


 彼のその言葉にカマエルは息をのんで凍りついた。


「何と言う予期せぬ事だ。ハラリエル様は眠りの予言者。あの方が目覚めるのは滅多にないことだ。不吉な事が起きる予兆かも知れぬぞ……!」


 カマエルはそう呟くと、血相をかいて顔が青ざめた。


「息子よ、ドミニオン様にはこの事は何と告げた?」


「――偉大なるドミニオン様は、私の話には耳を傾けようとはしませんでした。大宗主様は、私の言葉は天界に混乱をもたらすと言いました」


 彼がそう話すと、カマエルはそこで愕然となった。


「おお、何て事だ! 天界に暗雲の影が迫っているというのに、ドミニオン様は一体何をお考えなのか……!」


 カマエルは鎖に繋ぎ止められた牢屋の中で、愕然とため息をついたのだった。そして、沈黙は静かに2人の間に闇をおとした。


「お前の兄達はどうした。元気にしているのか?」


 カマエルの質問に、彼は首を横に振って悲しそうに答えた。


「――あの日、貴方様が悪魔に捕らわれてからまもなく経った頃でした。天界は大きな混乱に包まれた所を、悪魔が再びやって来たのです。あの時より敵の数は少なく、我々は勝てる戦いでした。ですが、予期せぬ事に悪魔の王の直属の部下が天界に現れたのです。それも、もっとも醜悪で悪に満ちている者を引き連れての襲来です。そして、そこに現れたのはアスモデウス、ベルフェゴール、ベルゼバブ、サタナエル、そしてベリアルです。彼らの襲来に天界は再び混乱に陥れられました! 天界を我らの血で赤く染めると、悪魔達は我らの血と肉を食らいながら酷い殺戮を繰り返しました。まるであの日の忌まわしき惨劇のようでした。あの者達は、まさしくケダモノです! 力を持たない弱き者を殺すことに快楽を感じて楽しんでいるのです! そして、地獄の様な惨状の中、一人の兄はアスモデウスに戦いを挑みました。兄は悪魔と勇敢に戦いました。そして、その戦いで深傷を負った兄は悪魔の前で敗れたのです――! 兄は奇跡的に命は助かったものの、今はラファエル様の宮殿で治療を受けています。もう一人の兄は、悪魔にハラリエル様を人質に捕られ、ハラリエル様を助ける為に身代わりとなって悪魔に捕らわれてしまいました。一番上の兄は悪魔が再び天界に来させない為に、能天使の役目を勤めながら地上でカブリエル様と共に目を光らせております…――!」


 彼は一通り話すとカマエルに頭を下げて一礼した。そして、唇を噛みしめると両手の拳を握って深い怒りに満ちた。

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