第5章―死と恐怖―16
口笛を吹くと何処からともなくと2匹のネズミが現れた。そして、2匹のネズミはジャントゥーユの下に近寄った。
ネズミは彼が持っているチーズの欠片を欲しそうに待っていた。ギュータスは突然現れたネズミに驚くと声をあげた。
「うわぁ、きったねーネズミだ! 一体何処から現れやがった!?」
ギュータスはそう言うと檻の側から急に離れた。2匹のネズミは彼の醜い顔に驚く事もなく近づくと、馴れた様子でなついていた。
1匹のネズミは彼の肩の上に登り、もう1匹は手のひらに乗った。その光景を見ていたギュータスは気分がわるそうな顔をしながら皮肉を口にした。
「ま、まさかそれ、その小汚ねぇネズミ……! お前のお友達とか言う気じゃねーよな……!?」
その言葉にジャントゥーユはニタリと不気味に笑った。相手の不気味さがますます際立つと全身に鳥肌が立つ寒気を感じた。彼は2匹のネズミを可愛がる様子で話した。
「こいつら利口……俺になついている……。命令すれば紙切れ探してくれる……。役立たずなお前よりも役に立つ……」
彼のその言葉にギュータスは言い返した。
「なんだとテメー!? 俺をドブネズミと一緒にするなっ!!」
ギュータスはそう言うと怒りながら牢屋の中に入った。そして、ジャントゥーユを手で押すと、肩からネズミが1匹床に落ちた。
ネズミが床に落ちるとギュータスは怒りながら踏みつけようとした。床に落ちたネズミは、すばしっこい動きで彼の足を避けると牢屋の中を好き放題に動き回った。
ギュータスはネズミを足で踏みつけようと必死になったが其処で力尽きて床に大きく倒れ込んだ。そして、ネズミは再びジャントゥーユの肩の上に登った。
「チッ、クソネズミの分際でよくもこの俺様を舐めやがって…!」
そう言うと舌打ちをして睨んだ。ジャントゥーユは2匹のネズミを可愛がりながら、ギュータスに言った。
「コイツらは他のネズミより頭が良い……利口で頭が賢いんだ……もう1匹いたけど今はいない。今は2匹だけ……。ケイバーがこの前コイツらの兄弟を殺してそれをあの少年に食べさせた……。俺……許さない……でもあの少年……賢いネズミを食べた……きっと頭が賢くなる…… 。俺にはわかる……ウヘ、ウヘヘへ……」
ジャントゥーユはそう話すと不気味に笑った。その話を聞いたギュータスは思わず笑った。
「クククッ。奴から話しは聞いていたが、まさかそのネズミだったとはな……。これは笑わずにはいられないぜ……!」
彼はそう言うと再び面白そうに笑った。
「確かにそいつら食べたら頭良くなるかもな! ケイバーの奴も相当、頭がイカれてるぜ!」
そう言っておかしそうに大きな笑い声を上げた。ジャントゥーユは2匹のネズミに命令をした。
「お前達これが欲しいか……? お前達が好きなチーズだ……紙切れをみつけたらご褒美にこれをやる……」
そう言って命令を出すと、2匹のネズミは彼の言葉を理解したのか、肩から降りて部屋の中を動き回った。
ネズミは言葉が分かるのか、まるで彼の言葉を理解しているようだった。ギュータスは笑うのを止めるとズカズカと牢屋の外に出てた。そして、ジャントゥーユに話しかけた。
「なんだよお前、魔物使いか? ネズミなんかと仲良くお友達になってよ、ますます気味が悪いぜ。気味が悪いのは顔だけにしろよな?」
ギュータスはジャントゥーユにそう話すと、牢屋の外で再び笑いを込み上げて笑った。すると彼が一言言い返した。
「黙れ!」
突然、大きな声で言われると彼は言い返した。
「なんだとテメー!」
ギュータスはカッカしながら、牢屋の中に再び入った。するとジャントゥーユは後ろを振り向いて話した。
「おい、ギュータス……紙切れあったぞ………。やっぱりコイツら利口だ……お前よりもな……。ウヘヘヘ……」
ジャントゥーユはそう言って不気味に笑うと、人差し指をどこかに向けて指した。2匹のネズミは壊れた木のベッドの前でチューチュー鳴くと、中から合図を送っていた。
ジャントゥーユは壊れた木のベッドの方へ近づくと手探りで調べ始めた。そして、下にしゃがんでベッドの下を覗いて見ると、ベッドの下の隙間に白い紙切れのようなものが挟まれていた。
ジャントゥーユは紙切れをみつけると、目を細めながらニターッと怪しく笑った。木の間に挟まれている白い紙を指先でつまむと、それをゆっくりと抜き取った。ニタリと笑いながら白い紙切れを手にすると、それをもったままギュータスの方へと近づいた。
「紙切れみつけたぞ……俺はお前より賢い……。お前が必死になってみつけられなかった物を俺はみつけた……。お前は暴れる事だけしかできないただのマヌケな無能な奴だ……」
彼はそう言うとニタニタしながら笑った。小バカにした感じで言われるとギュータスは一瞬、奴を殺してやろうかと怒りに震えた。しかし、こんな相手に先に手柄を取られたくなかったギュータスはジャントゥーユの前で下手に出ると巧みな言葉で紙切れを奪い取ろうとした。
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