第5章―死と恐怖―13
――一方その頃ギュータスは、クロビスに言われたとおりに逃げた囚人の男が居た塔へと、ジャントゥーユと共に向かった。
向かう途中で渡り廊下で年老いた看守のジュノーを見つけた。ギュータスは彼とすれ違った際に、声を掛けた。しかし、彼は聞いてないのか。そのまますれ違うとスタスタと歩いて何処かに消えて行った。感じの悪いジュノーに対してギュータスは悪口を言った。
「ちっ、何だあのジジイ……! こっちから声を掛けてやったのにシカトしやがった。くそ生意気なジジイだぜ!」
ギュータスがその事を言うと、ジャントゥーユはボソボソと話した。
「ジュノーは老いた所為で耳がほとんど聞こえてない……。だからアイツ周りに悪口言われても、耳が遠いから聞こえない……。アイツいつも皆に馬鹿にされてる……」
ジャントゥーユがその事を話すと隣でギュータスは馬鹿笑いをした。
「そーだ、そーだったな! 確かあのジーサンは耳つんぼだったな!?」
そう言ってバカ笑いをすると後ろを振り向いて相手を小バカにした仕草をした。そして、前を向くと再び廊下を歩いた。するとそこで不意に気がついた。
「ん、ちょっと待てよ? 何でジュノーが俺達が来た塔に行くんだ。あいつは確か、東の塔に配属されてたよな。東の塔から『滅多』に出て来ないジーサンが一体何しに西の塔に行くんだ……?」
そこで疑問に思い首を傾げると『まあ、いいか』と言ってジャントゥーユと共に。逃げた囚人の男が居た塔へと向かった。そして、牢屋がある部屋に辿り着くと、2人は牢屋の中に入って手荒い感じで紙切れを探した。手当たり次第に怪しい所を探し始めると彼は舌打ちをした。
「チッ、紙切れはどこだ! 全然見つからねぇ、一体何処に隠しやがった!?」
ギュータスはそう言うと、牢屋の中にあった備品を壊して愚痴を溢した。
「チェスターの野郎~! あの言葉がデマだったら俺がアイツをなぶり殺してやる!」
血に飢えた言葉を言うと狂気に満ちた顔でニヤリと笑いを浮かべた。殺気立つ彼の近くではジャントゥーユが牢屋の前で何かをやっていた。今だに紙切れを探さない彼に対して、ギュータスは苛立った声を上げた。
「おい、お前もサボってないでさっさと探せ!」
ギュータスが声を掛けると、ジャントゥーユは聞いてないかのように何処かをジッと見ていた。
「てめぇ、探せって言ってんのが聞こえねーのか!?」
気の短い彼は、牢屋の中でキレ気味になりながら怒鳴りつけた。イラつく彼とは打って変わって、ジャントゥーユはあくまでも冷静な様子で何かを調べていた。苛立った彼は牢屋の中から出て来ると再び声を掛けた。
「おい、そこの醜い化物! さっきから人の話を聞いてるのか!? ボーッとしてないでお前も一緒に探せ!」
ギュータスはそう言い放つと、ジャントゥーユの肩を右手で強く掴んだ。すると彼は後ろを黙って振り向くなり、彼の腹部に鋭く尖った銀のナイフをいきなり突きつけた。
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