第5章―死と恐怖―11
「本当にオーチスが囚人を逃がしたのか……?」
1人の男が仲間に問いかけた。すると違う看守の男が否定した。
「ウソだ! 俺は信じないぞ! アイツは俺達の仲間じゃないか、オーチスはそんなことは絶対にしない奴だ!」
そう言って否定すると違う看守の男がオーチスのことを疑った。
「…それはどうかな。アイツは逃げた囚人が居たエリアの担当をしていた。少なからずアイツが、脱獄に加担していてもおかしくない話だ……!」
彼はそう言うと松明を持ちながら、自分の体を小刻みに震わせた。1人の看守がそう言って彼を疑うと違う看守達も同じく頷いた。
「アイツは俺達を裏切ったんだ! ひょっとしたらどこかのスパイかもしれない! きっとここに潜入する為に看守になりすまして、潜り込んだにちげぇねー! くそっ! オーチスの野郎、仲間の俺達を騙しやがって絶対に許さねぇ!」
怒りを露らにしながらそう言うと、持っている松明を地面に叩きつけて怒りを剥き出した。看守達は外で騒ぐと一部の男達は仲間のオーチスに裏切られたと殺気だった。もはや一つの小石が水の中で波紋を描くように、事態はさらに悪化の一歩を辿った。
「そう言えばあそこのエリアは、オーチスの他に新米の若い看守も一緒に担当していただろ!? 名前は確かチェスターって言う男だ、そいつなら何か知ってるかも知れない! 誰かその男が何処にいるか知っているか!? 俺がそいつに直接、話を聞いてくる!」
1人の看守がそう言うと中から出てきた看守が釘を刺すように答えた。
「その男ならさっきクロビス様に呼ばれて、拷問部屋に行った……!」
中から出てきた看守がそのことを言うと、周りは騒然となった。
「何故だ!? ひょっとしてあいつもグルなのか……!?」
違う看守の男が横から口を挟むと、中から出てきた男は自分が知っていることを全て話した。
「俺が拷問部屋の扉の前で聞いた話しはオーチスが囚人を逃がす計画を企てていたことをアイツは知っていたらしい……! アイツがクロビス様にそう言ってた話を俺は扉の前で聞いたんだ!」
中から出てきた男が皆の前でそのことを話すと、再び周りはざわついた。オーチスを信じている男は皆の前で話した。
「俺は今から直接、あの人達に抗議しに行こうと思う! オーチスはそんな奴じゃないって言って来る――!」
彼はそう言って話すと今にも抗議しに行きそうな雰囲気だった。するとそこにいた複数の看守が、彼をその場で慌てて取り押さえた。
「やめとけ、お前も死ぬぞ!? お前はアイツらの怖さを知らないようだ……! アイツらは命を奪う事に、なんの躊躇いも迷いも抵抗感すらない冷酷で非道な連中だ! お前までアイツらに殺されるぞ!?」
後ろから取り押さえた中年の男が、思わずそのことを話した。
「話がまともに通じる相手じゃないんだ! 命を無駄に粗末にするな!」
中年の男がそう言うと、オーチスを信じていた男はそこで怖じ気づいて、急に大人しくなった。やり場のない怒りが込み上げると、雪で埋まっている地面を拳でおもいっきり叩いた。
『クソォォォッ!!』
仲間を救えないもどかしさに、その場でやりきれなくなると、男は雪吹雪きが舞う中で悔しい声を上げて叫んだ。男達が騒いでるとリオファーレが不意に現れた。
「一体なんの騒ぎだ!」
リオファーレの登場に其処で騒いでた看守達は一斉に静まり返った。そして、彼らを見るなり凛とした口調で話した。
「お前達、一体其処で何をしている。逃げた囚人は見つかったのか?」
彼そうが尋ねると1人の看守が答えた。
「いえ、まだ捜索中です……!」
男の顔色に気がついたリオファーレはその場で問いただした。
「お前達そこに集まって何の話をしている?」
彼がそのことを不意に尋ねると、1人の看守が逆に尋ねた。
「あっ、あの……! リオファーレ様に聞きたい事があります――!」
彼はそう言うと自分の頭に被っているフードを肩に下ろした。男の畏まったその様子に彼は凛とした口調で話した。
「なんだ?」
切れ長の目に鋭い視線が男に向けられた。まるで威圧感さえ感じてしまう程の雰囲気だった。男は自分に向けられた視線に息を呑んで緊張した。
彼は一瞬、そこで尋ねようか迷った。側にいた違う看守が横から口を挟んで、止めた方がいいと言うと、彼は意を決してリオファーレに尋ねた。
「リオファーレ様に一つお尋ねたしたい事があります……! 我々の仲間の1人がさき程から姿が見当たりません。中から慌てて出てきた看守の話によれば、彼が罪人を逃がした容疑で拷問部屋で尋問と拷問を受けているとの話です。その話は、本当なんでしょうか……!?」
「何っ!?」
その話しに彼は眉を細めた。
「リオファーレ様なら、何か知っているかも知れないと思い聞いてみました……!」
男はそう話すと最後に改まって一礼をした。その話にリオファーレはそこで驚愕した。
「何だと、その話は本当か……!?」
リオファーレは男の話しを聞くや否や、ようやく事態を呑み込んだ。周りにいた看守達も自分達も彼らに拷問されるんじゃないかという恐怖心が、半ば渦巻いたのだった。
雪が吹き荒れる中、男達は無言で吹雪の中を立ち止まった。時たま松明が燃える音が静寂の中で、歪な音をたてた。
シンと静まり返る中でリオファーレは、中から出てきた看守に声をかけた。
「中から出てきた看守の男はお前か? それともお前か?」
1人ずつの顔を見ながらリオファーレはそう話した。すると端の方に居た男が、恐る恐る自分の手を上げた。彼は怖じ気づきながら答えた。
「わっ、わたしです……!」
そう言って返事をすると、びくびくした態度でリオファーレの前に出てきた。
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