第5章―死と恐怖―8

 

間もなくしてケイバーが出勤簿と報告書が一つに纏めてあるファイルを持って現れた。


「おい、言われた通りもってきたぜ!」


ケイバーはそう話すと二つの本を手渡した。クロビスはそれを持つと椅子に座った。優雅に片足を組んで座ると彼はそれを読んだ。


「――さてとオーチス。お前が昨日、本当に出勤したか確認しようじゃないか? まっ、お前は精々そこで神に祈ってるがいい」


 クロビスはオーチスに冷たくそう話すと、出勤簿を開いた。冷たく張り詰めた部屋の中に緊張が走る。クロビスは出勤簿を開くとオーチスの名前だけを探して確認した。そして、彼の名前を確認すると一言話した。


「確かに昨日は出勤しているな。どうだその椅子に座ってるい気分は? まだ自分が生きる居心地はするか?」


 彼の質問にオーチスは黙ったまま、顔から汗をかいた。自分が生きるか死ぬかの瀬戸際に、彼はその問いかけに返事をする余裕すらなかった。彼は出勤簿を見ながら、オーチスが昨日どこに配属されていたかをくまなく調べた――。


「お前は昨日は東の塔を担当してたのか? 東の塔だと確かに逃げた囚人の棟とは、反対側の棟になるな。するとチェスターの話しに矛盾が出る。この矛盾は一体なんだ?」


 彼がそう言うと黙っていたチェスターが横から口を挟んだ。


「クロビス様、自分は嘘はついてません! 自分は昨日は逃げた囚人のエリアを担当して見回っていましたが、自分はこの目で彼が牢屋の前で囚人と話している所を見ました!」


チェスターはそう言って断言すると、自分は絶対見たと最後まで主張し続けた。そして、オーチスが脱獄に加担していると彼はキッパリと言った。


 更にチェスターは自分は彼に脱獄の話を尋ねたら、彼に首を絞められて脅された事実も話した。チェスターは囚人が今日、脱走した事実が何よりの証拠だとクロビスに話すとその上で自分は死にたくないと哀れに訴えた。


オーチスはチェスターの証言に怒りを感じると、直ぐに反論した。彼も自分が死の瀬戸際に立たされており、感情を剥き出しにしたまま反論した。


 拘束された椅子の上で自分の身の潔白を必死で訴え続けた。自分は逃げた囚人とは一切関わっていない事や、囚人の脱獄に加担していない事も、そして、逃げた囚人と会話さえした事もないことや、ましてや囚人を脱獄させようと計画を企てた覚えもないとオーチスは証言して訴えた。


 何より、昨日は自分は東の塔を担当していて。逃げた囚人がいる塔には昨日は一切、立ち寄っていないとクロビスに訴えた。2人はお互いに自分の命が懸かっているだけにあり。どちらも迫真に迫る言葉を言うと、自分は無実でやっていない、知らないと、身の潔白を必死で訴えたのだった。


「私にはわかるぞ! お前は私を嵌めようとしているのだ! 上司である私を憎んで、貶めようとしてこんな『小細工』をしたのか!? 私は知っているんだぞ! お前は前から私の事を鬱陶しいと思っていることもな! 憎い上司が消えて満足か!? どうだ言ってみろチェスター!」

 

 オーチスが激怒しながらそう言い放つと、彼は自分の上司である男にたった今、失望したと強気な態度で言い返した。


「生意気な小僧だ! 新米だから今まで優遇していたが、私こそお前に失望したぞ!」


2人が激しく言い争うとクロビスはそこでクスッと微笑を浮かべて鼻で笑った。


「そうだ『失望』だ。私はなオーチス、たった今お前に失望したぞ――!」


 クロビスは彼にそう話すと、急に声を荒らげて怒鳴り散らした。彼は出勤簿の他に昨日の報告書をくまなく読んだのだ。そして、ある事実を彼は知った。まるでパズルの断片が一つに組み合わされたかのようにそこで突如、高笑いをした。


「オーチスお前は昨日、逃げた囚人がいる塔には行っていないと言ったな?」


「私は昨日は一切あの塔には立ち入ってません、 私の報告書をご覧下されば解るはずです!」


オーチスは真っ直ぐにそう答えた。しかし、彼は肩を震わせて笑うと、彼の前に報告書をバッと見せつけた。


「貴様、これをよく見ろ! これを見てもう一度私に今の言葉を言って見るがいい!」


突きつけられた報告書を見せられると、オーチスはその場で驚愕した。


『なっ、なんだこれは……!?』


『そんな、馬鹿なっ……!』


書かれている報告書を見ると、唖然となって声を上げた。

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