第3章―クロビスの怒り―2

「ッ……!?」


 リオファーレの意外な行動に周りにいた誰もが一斉に驚いた。そして、クロビスは唖然となって彼を見た。


彼の腕からは突き刺さった短剣から血がポタポタと地面に流れた。リオファーレは鋭くクロビスを睨むと短剣を腕から抜き取り、凛とした口調で彼に言い放った。


「こんなことをしている場合じゃないだろ!? 頭を冷せクロビス…――!」


リオファーレのその言い方にクロビスはムッとした表情を見せた。


「貴様、どう言うつもりだリオファーレ!?」


 クロビスはそこでカッとなるとリオファーレにいきなりくってかかった。激怒した様子の彼とは対照的にリオファーレは、冷静な言葉で話した。


「落ち着けクロビス、お前は解ってない! 囚人がこの要塞の中を逃げ回ってる。それがどういう事か本当にわかっているか!?」


 リオファーレが冷静になりながら彼に向かってそう諭すと、ギュータスは彼らに口を挟んだ。


「ああ、そうだ! リオファーレの言う通りだ! 早く脱走した囚人を捕まえよう!」


ギュータスがそう言うとクロビスは、やっと我に返った。


「ちっ、生意気な奴だ……! 親父のお気に入りじゃなかったら、今頃その綺麗な顔をこの短剣でズタズタに切り刻んで、醜いバケモノの顔をしたオークの顔に変えてやってるところだ!」


彼はそう言うと血のついた短剣を懐におさめた。クロビスはそこにいた全員に命令を下した。


「脱走した囚人を捕まえた者には褒美で金貨200枚を与える! さあ、気合いを入れて探せ!」


 彼がそう言って命令をすると、看守達は金貨に目が眩んだのか。四方方に散り散りになって逃げた囚人を探し始めた。


 そこにいた看守達がいなくなると、他の4人もあとからバラバラになって行動した。そんな時、クロビスは後ろからリオファーレの肩を掴むと壁にドンと押し付けて一言忠告した。壁際に押し付けると彼は怒った口調で言い放った。


「私はここの所長の息子だぞ! そしてこのタルタロスの牢獄は私が管理してるようなものだ! 見ろ、鍵だってちゃんとあるだろ!? 私がいなければこの牢獄タルタロスから簡単に出られやしない!」


 クロビスがそう言うと、リオファーレは無言で黙った。


「いいか、貴様この私に指図をするな! 二度とだ! 私に指図したら、お前を罪人の牢屋の中に閉じ込めて一生出られなくさせてやる!」


 彼がそう言って脅しかけると、リオファーレは黙って一言返事を返した。


「ああ、わかった…――」


リオファーレがそう言うと彼は肩から手を離し、脱走した囚人を探しにクロビスも牢獄の中を探し回った。

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