その日、朝日が昇る前の夜明け頃、シンと静寂に包まれた牢獄内で突如騒ぎが起きた。1人の罪人の囚人が牢から抜け出して、タルタロスの牢獄の中を必死で逃げ回った。集まった看守達は逃げた男を探す為に、要塞の中をくまなく歩いて必死に探し回った――。

「いたか！？　早く見つけろ！　逃がすな！」

看守達は1人の囚人に対して騒ぎたった。そこにあの恐怖の看守達。クロビスとジャントゥーユとギュータスとケイバーが現れた。そして、後から遅れるようにリオファーレも現れた。狼狽える他の看守達にクロビスが尋ねた。

「お前達、一体なんの騒ぎだ？」

　そこでクロビスが尋ねると１人の看守が慌てて報告した。

「クロビス様、報告があります！　今朝方、牢屋から囚人が１人脱獄しました！」

「なっ、何……！？」

　クロビスはそこで表情を一気にかえた。

「どうやって脱走した！？」

「脱走した囚人の牢屋は鉄格子が腐ってました。恐らくそこを無理矢理壊したのだと思います！」

　そう言って答えるとクロビスは次の瞬間、問答無用で持っている警棒で男をぶちのめした。警棒で激しく叩かれた男は恐怖で悲鳴をあげて許しを乞いた。だが、クロビスは頭にきたのか、警棒で１人の看守に対して激しく暴行を続けた。そして床に倒れた看守の背中を彼は履いてる黒いブーツで踏みつけると怒り声を上げた。

「おい、貴様！　一体どうしてくれるんだ！？　私はここの所長の息子だぞ！　親父に何て言えばいいのか言ってみろ！」

　クロビスは激怒しながら怒鳴り散らすと、殴りつけた看守を無理やり地面から立たせた。彼は、このタルタロスの牢獄の責任者である父。ギレイタス所長の息子であった。ギレイタスはクロビスが唯一恐れる男だった。彼は感情的になりながら持っていた警棒で再び彼を殴りつけた。

「ここのエリアはお前が担当だったろ……！？　なぜ囚人を勝手に逃がしたりしたんだ！？」

　クロビスが激怒した様子で問い詰めると、男は怯えながら震えた声で答えた。

「私は決して囚人を逃がしたりはしてません！　ど、どうか信じて下さいクロビス様……！」

男は口から血を流しながらもそう言って答えた。その時、他の4人はその様子を離れた所で黙って見ていた。クロビスは頭の中が突然カッとなると持っていた短剣で男をその場で刺そうとした。

「お前みたいな無能なヤツは私が今ここで裁いてやる！　覚悟しろっ！！」

　クロビスは激昂したまま、鋭い短剣を真上から振り翳して襲いかかった。

『ヒィィィッ！！』

その時、自分に向かって短剣が降り下ろされると男は恐れて悲鳴をあげた。その瞬間、2人の間にリオファーレが突如割り込むと、クロビスの振り翳した短剣を彼は自分の腕で受け止めた。

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