夢の葉
もざどみれーる
一
激しく行き交う自動車の群れを見ていると、ああ、あの中に飛び込んでしまえばいいのだ、そうすればきっと全てが終わるのだ、等と考えもする。そうかと思えば、痛いのは御免だ、せめて苦しまずに終わりたい、しかしそれは恐らく無理だから
余が歩いてK駅に着いてみると、何やら入り口の辺りが騒がしい。人垣とは言わぬまでも、それなりの野次馬と
何か事件でもあったのだろうか。余は半ば反射的にその場を後にして、一つ先のS駅まで歩いていく事に決めた。多少の時間の損失はあるにせよ、野次馬の一味になって下世話な傍観者となる方が遥かに好かぬ。足元の小石を排水口目掛けてコツンと蹴ると、すぐにカランカランと音を出しながら、穴の中にポツンと消えていった。
ところで、歩くという事は、なるほど身体的健康には良いのかも知れぬが、だからと言って直ちに精神的健康にも有効だとは言えぬ。目的地を目指してひたすら一直線に歩いていく事が出来る人を、余は寡聞にして知らぬ。結局、人はほとんど常に何かしら考え事をする星の
例えば、歩いている最中に厭な奴の顔が唐突に頭にポッカリ浮かんできたとする。余は人が出来ておらぬから、かような事が起きてみれば
……等と考えているうちに、いつの間にやらS駅の前に着いたらしい。───人生とは、命の重さとは裏腹に、こんな風に軽く運ばれるものやも知れぬ。
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