あの期間を正面から書き記した青春小説。

2020年代初頭に世界中の個人を分断させたあの疫病。それに強く翻弄されたのは、さまざまなターンのとば口に立つ若い世代だった。
本作は、実にシンプルに焦点を絞って、物理的に会うことのできない恋人同士の苦悩を本人たちの視点のみで語っている。
感情移入しやすく、はらはらもさせられ、そしてちゃんとエモい。なによりも、過不足無く綺麗にまとまっている。読み始めるなら、一気に完読されることを強くお奨めする。

(以下、ネタバレ含む)
作品のつくりはとても勉強になった。
同じように現実世界を舞台に書くことが多い身としては、いろいろなことを盛り込まない(盛り込みすぎない)という潔さを強く感じられた。
敢えて(だと思うが)その後を記さない点もスマートだ。僕ではとてもこうはいかない。
そんなふうに自省を促された作品でもあった。
良作。

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