歪愛 ~幼馴染の狂った愛~

ヤンデレ作品大好き家族

第1章 始まり

10月末のある日

「はーい、先週の数学課題回収すんでーー」

5限終わりのチャイムと同時に先生の声が教室内に響く。

「やっとか、月曜って本当にやる気でないんだけど…」

そう言いながら、左肩を揉みながら昨日やってきた数学の課題を提出した。

「おい、態度ようないぞ中村。突然、社会に放り出されたとき、ホンマにどうすんねん!」

(うるせーよ、そんな状況ねぇーだろ(怒))

思わず軽く舌打ちした。


中村裕也なかむらゆうや。偏差値56前後の谷川高校普通科に通う普通の高校3年生。

性格も生真面目じゃないし、かといって不良でもない。成績も普通。

ファッション、身だしなみ、プレゼントのセンス諸々こだわりなんてこれっぽっち。

そろそろ進路を考えないといけない時期なんだが、立てている人生設計は1つだけ。

【普通の高校・大学を卒業して普通の企業に就職して、安定した人生を送りたい。】

それだけ叶えてくれれば本望さ。将来の夢?なにそれ、おいしいの?という状態。

そんないい加減なこともあってからか、友達も少ない。

けど、1人ぼっちじゃない。


「裕ちゃん!一緒に帰ろう~~」


と、駄々っ子の子供みたいに話しかけてきたのが幼馴染の中野香織なかのかおり

人一倍優しくて、笑顔が似合ってる学校1番の人気者。学年・男女関係なくクラスメートが学校生活や部活動など悩んでいるときや困っているときに、悩みを聞いたり助けたりしている。また、”谷川高校ーのマドンナ”、”1万年に1人の逸材”と呼ばれている程の容姿端麗。成績は約300人いる中の学年トップクラスと優秀。吹奏楽部部長と兼ねて保健委員長もやっていて、まさに青春を謳歌中。


そんな彼女と毎日一緒に帰っているのが俺なんだけど、選ぶべき相手を間違えてる。

普通でつまらなくて大した個性もないトップオブ平凡な人間が、どんな天秤にかけたとしても釣り合ってないのは明白だ。最初から自分が好きな相手と結ばれてたった1つの人生を歩んでいくのがよっぽど良いに決まってる。もったいないことするなよと常々思う。


この日、帰る途中彼女に呆れた表情でこう言った。

「なあ、俺と帰るのそろそろやめにしない?」

「えっ、な、何でよ!?いいじゃん、このままでも」

一瞬驚いた表情を見せたが彼女は内心困っていた。

俺は、小さな溜め息をついて少しの間を開けた後に

「いや、そろそろ進学の話も本気で考えないといけないっていうか、そのぉ…

推薦入試とか、もう始まってるしさぁ。」

「まぁ、確かにね」

「忙しい時期になってるから、一緒に帰る時間なんて無いと思うんだけど」

「うーん…」彼女はしばらく考えて、学校近くの横断歩道を渡る途中で

「そりゃ受験勉強大変だし、私も一緒に帰る時間は無いと思うよ?けどね、残された貴重な時間を1秒1秒噛みしめていきたいの。」

「は、はぁ…」

「裕ちゃんは迷惑だなーんて思ってるかもしれないけど、こうやって一緒に帰るのは会話も増えて楽しいんだよ♪ だからこれからも続けようね、裕ちゃん!」

「 ……。」(参ったな、こりゃ)

反論の余地なし。こう言われちゃ仕方ない。最もらしい正論を被せたつもりだったんだけど、自分自身の人生観を語ってきやがった。悔しいけど、彼女のほうが1枚も2枚も上手うわてだ。

「分かった。高校を卒業するまでな、それ以降は知らん。」

「やったー!ありがとう!嬉しー!」というと彼女はメリーゴーランドのような喜びの舞を、狭い通学路で踊った。

しばらくして香織の家に着いた時、また明日ねと別れを告げた。


でも、一緒に帰るのをやめようとしたのはもう一つの理由がある。

もうこれ以上他の生徒から俺に対して深い嫉妬を買われないようにするためだ。


というのも香織は容姿端麗で、学校1番の人気者だから毎日数十人の男子から告白されるそうで、夏休みの時には屋上で複数の男子から同時に告白したという噂も立った。けれど、私には好きな人が別にいるからという理由で告白を全部断ったのだ。

それで、フラれた同学年の男子が彼女の好きな人は誰なのかという疑問をはっきりさせるために白羽の矢が立ったのが、毎日一緒に帰っている俺だった。羨ましい気持ちから夏休みが半分過ぎたところで呼び出されて何時間も問い詰められた。もちろん香織の彼氏じゃないと否定する俺だったが信じてもらえなかった経緯がある。


もちろん、一緒に帰るのは悪い気分なんてしない。けど、俺の事情で香織を巻き込む事態になった時には大量の爆弾ダイナマイトが爆発するように収拾がつかなくなる。

今まで香織に言ってなかったからこそ帰り道に言おうとしたが、言えなかった。

ただただ臆病になってしまってた。


それでも、一歩の勇気が出なかったことを気に留めるような自分じゃない。

「あーあ、面倒くせぇ課題を先にやらねぇとな…」

そんなことを考えてると、家路についていた。課題をさっさと終えて晩御飯を食べて風呂に入って、明日の持ち物を入れ終えたらすぐに寝た。


収拾がつかなくなる事件が起きるなんて、俺には微塵みじんも思ってもいなかったからな



→第2章【香織からの誘い】へ続く











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