(二)-17

 それから父のいない食卓が三ヶ月続いた。

 捜索は一週間続けられた。その中で父の乗っていた第七二曳光丸が海底で沈んでいるのが確認された。

 潜水夫による船内捜索もされたが、中には父はいなかった。海に投げ出されて、そのまま行方知れずになってしまったのであった。

 祖父のあきらは、父の遭難から三日後には引退していた漁師の仕事に復帰することになった。

 そして父の遭難後、静かな食卓が続いていた夕食どきに、父の父が静かに口を開いた。

「死亡認定すんべえ」

「でも、まだ|海人≪かいと≫さんは……」

 母の喜美代が大声で言った。

「喜美代さん、俺だっていまだに信じられねえよ。でもな、もう三ヶ月だ」

「まだ三ヶ月です!」

「生きていれば連絡があるはずだ。でもよ、全く音沙汰ねえ」


(続く)

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