【ロード&マスター】〜元有名ゲームクリエイターはダンジョンを無双する〜

荒舟

第1章 東京ダンジョン編

第1話 出現と好奇心


あの日、バチカン市国が壊滅した。


そこでは、人間が作り上げた文明という文明がすべて消滅し、その地に残った61人は行方不明となった。


この災害は、世界に「」を与えた。



 ◆ ◆ ◆




今から一年前、地球の各国にダンジョンという巨塔が現れた。

その巨塔は日本の都市、東京にも出現した。

世界中に現れた塔に人類は大パニックとなったのだ。



世界で最初にアメリカ合衆国が塔の中を調査した。

編制された部隊は60名。

しかし、無事ダンジョンから帰ってこれたのはたったの12人。

その調査で分かったことは、すぐに世界へ発表された。



分かったことは、大きく分けて3つ。



1つ目、ダンジョンに入った人は「スキル」という不思議な力を授かる。

それと同時に「ステータス」という自分の能力を測るウィンドウを獲得する。


2つ目、ダンジョンの中には「モンスター」が存在しており、その戦闘力はアメリカ軍特殊部隊をはるかに凌駕する。唯一太刀打ちできるのは、攻撃型スキルを授かった人のみだ。


3つ目。

この事実は人類を恐怖に陥れた。

「ステータス」に表示されている画面。

その右上にはカウントダウンしているタイマーがあった。

そこに書かれていたのは、



【アメリカ合衆国消滅まで————191年】



これはアメリカの特殊部隊が目にしたものだ。

のちに日本の自衛隊がダンジョンに入った際に目にしたものは、



【日本国消滅まで————132年】



調査の結果、これは各国の国土面積が関わっていることがわかった。

現在地球に存在している国の数は、194ヶ国。

国土面積世界3位のアメリカは、191年後に消滅。

国土面積世界62位の日本は、132年後に消滅。

小学生にもわかる事実がそこにはあった。



一年ごとに国土面積が小さい順に国が消滅していくということだ。

これを止めるには、ダンジョンを攻略しなければいけない。

それがアメリカの出した結論だ。

この事実は世界各国の軍、政治、経済すべてに影響を及ぼした。



◆ ◆ ◆




俺の名前は、九条くじょうカイト。

大手ゲーム会社『STAR GAMES』でゲームクリエイターとして働いていた。



そこで俺が主導で作り上げたゲーム【LORD AND MASTER】(ロード&マスター)は、世界的ヒットを果たした。

そんな時期もあった...。

最初は世界で最もマップの広いVRMMOとして話題になった。

また、翌年にはキャラクター最優秀賞という賞ももらった。



だが、その波はそう続かなかった。

会社のトップが代替わりして、俺の作ったゲームの方針を変えることになった。

それは俺たちが作り上げたゲームを全て否定するようなものだった。



それで怒った俺は上司に頭突きを喰らわしたのだ…。



今思えば、本当にバカなことをした。

そんなことをすれば、『ロード&マスター』の責任者から外され、首になることくらい目に見えていたのに…。



「ははっ。やっぱりクビにされたか…」



一人家のリビングで、テレビを見ながら呟いた。

右手にはビール缶と、左手には大好物のスルメイカ。

あぁー。頭突きなんてしなきゃよかった…。

今更後悔している自分がいる。



『ロード&マスター』でたんまり稼いだから、しばらくは働かなくてもいいが、そのうち貯蓄が尽きてしまう…。

次の就職先どうしようかな〜。



その時だった。



「———緊急速報です!!突如、東京の中心に謎の塔が出現しました!その高さは、地上からでは確認できていません!」



薄暗い部屋の中で、俺は勢いよく立ち上がった。

テレビに映る光景を俺はまじまじと観た。



「……なんだあれは……」



部屋の中でぼそっと呟いた。

その声は若干震えていた。

その時の俺は気づいていなかったのだと思う。

それが———



———好奇心だってことを。

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