Legend on ice

りんごぼうや

2人の青年

「橘星空18歳、オリンピックで金メダルー!」


興奮する実況。歓声に包まれる会場。

その中央で煌びやかな衣装に身を包んだ青年は笑顔で手を振る。



その光景を小さな部屋のスマートフォンから見ている青年がいた。


ジャージ姿に髪の毛はボサボサ。耳にはヘッドフォンをかけている。

座っている机の上には「入試対策用英文法」と書かれている分厚い本が置いてある。


青年は、スマホの映像から目を離し、ヘッドフォンを外した。

そのまま椅子に全体重をかけ、体を仰け反る。


すると、青年の視界には、後方に置いてある黒いスケート靴半足が写った。

白いペンで「Tatuya.N」とサインが書いてある。

青年、仰反った体勢でそれを見つめながら呟く。


「いつからこんなに差がついたんだろう……」


青年、何も答えないスケート靴をただ見つめる。



画面の中の青年の首に金メダルが掛けられた。

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