第31話

 喫茶店で優雅に待つ私。

 紅茶を楽しみ、流れているジャズに耳を傾ける。

 スマホに着信が表示された。

 名前は原田はらだ君から。

「てことは…2人は…」

 メッセージを確認しなくても、なんとなく分かった。

 互いに絶望したに違いない。

「ふふ…」

 笑いそうになるのを堪える。

 見たかったなぁ…残念。

 カランコロン、とベルが鳴り響く。

 出入口を見ると雅虎まさとら君だ。

 全身濡れていた。

「大丈夫?」

 心配でかけ寄る。

 なんていうのは、演出。

「悪い、傘忘れてたから走って来てさ」

 ふーん…。

 表情はとても暗いよ?

 ちゃんと言ってくれなきゃダメじゃない。

 でも私からは言わない。

 彼の口から聞きたいから。

「ここだと寒いでしょ?家に来ない?」

「いや、いい。今日は帰ろうかな」

 なーんだ、つまんない。

 でも、焦ればダメだから、ここは解散するのが最適かも。

「分かった、また今度ね」

「ありがとな」

「私、折り畳みの傘あるし、普通の傘もあるし貸すよ」

 念のために準備しておいたから、役に立ちそう。

「すまない、折り畳み良いか?」

 私は鞄から真っ白の折り畳み傘を取り出して彼に渡した。

雅深まさみ、本当にごめん、またな」

「風邪引かないでね」

 私は胸元で小さく手を振って見送った。

「ふぅ…」

 直ぐに座った。

「必ず…落とす…」

 闘志が沸々と湧く。

 原田君には『ありがとう、またお願いするわ』とメッセージを送ると『任せて』と返ってきた。

「さてと…」

 帰ろう。

 忘れ物の確認をしてから、会計を済ませて、店を後にした。


 第3段階からは、慎重に進めよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る