第30話

 帰りのホームルームが終わって直ぐ、急いで待ち合わせ場所に向かった。

 到着した。ファミレス。

 中に入ると手を振る男の子を見つけた。


「変わらんね」

「手を振らなきゃ分かんなかったよ、一平いっぺい君」


 私は彼の向かいに座った。


「本当に久しぶりだね、元気だった?」

「まあね」


 原田はらだ一平君。

 同じ小学校の同級生で、中学から別々の学校に通っている。

 端正な顔立ち、落ち着きある雰囲気で、頭は良い。

 サッカーが上手な男の子だと覚えていた。


「ところで、どうして私の連絡先知ってたの?」


 そこが気になっていたので聞いてみる。


「あぁ、勝手に知ってごめんね。友達経由で教えてもらってね」

「そうなんだ」


 つばめの他に2~3人の連絡先は知ってるから、その中の誰かが教えたのかも。

 なら、いっかな。


「相変わらずガリ勉?」

「ふふ、そんなんじゃないよ。普通だよ」

「だって小学校の時の雅、休み時間ほとんど読書か宿題だったじゃん」

「それは宿題を家に持ち帰るのが嫌だったから」

「あー、だから僕とは違うのかー」


 小学校の頃の話に花を咲かせて、盛り上がる。

 楽しい、笑ってしまう。

 ふと時計を見た。もう1時間は経ったんだ。

 空はどんな感じかな…。


「えっ…」


 外を見ると、雅虎まさとら君がいた。

 目が合った。

 すると彼はダッシュでどこかへ走って行った。


 違う…違う違う違う。


 一平君はただの同じ小学校の時の同級生。

 特別な関係じゃない。


「ごめん、私帰る!」

「えっ?なっ…」

「また今度ゆっくり話そう!」


 自分の分の飲み物代をテーブルに置いて、鞄を持ってファミレスを出た。

 雨がポツポツと降ってきている。

 いつもなら鞄の中から折り畳み傘を出すのに、それを忘れて雅虎君の後を追って走った。

 でも、見当たらない…。

 追い付く事が出来なかった。


「どうしよう…誤解だよ…」


 止めどなく涙が溢れてきた。

 私は泣きながら傘を指さずに、とぼとぼと歩く。

 びしょ濡れになっている事に気付いたのは、帰宅した時だった。

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