第22話
何が起きたのか。
何故会ってしまったのか。
分からない。
ガラガラ、と保健室の戸を開けて入った。
「あれ?
保健室の先生が、今日も当たり前のようにいた。
「すみません、休ませて下さい」
「えっ」
目を大きく開いて驚いている。
「横になるならベッド使って良いからね」
「ありがとうございます」
俺はベッドの方に向い、カーテンを閉めて、靴を脱ぎ横になった。
考える。さっきの出来事を。
※
「名前は?」
透き通る凛とした、ちょっと棘のある声。
怖いなと思う。
「
「下は?」
笑っているのに、笑っていない。
何なのこの人。
「
「へぇー」
関心のない返事。
興味がないならさっさとどこかへ行って。
私は保健室に行きたいのに。
「いつから
やたらと私と雅虎君の関係が気になるようだ。
ダメ、無理、怖い。
「ちょっと!」
私と女の子の間に割って入ってくれた副会長さん。
「あんたいい加減にしな」
「先輩…」
先輩もあの子を知っているようだ。
「大丈夫、みぃちゃん?」
「のんちゃん」
「
「はぁ?あんたの方が丁寧でもたちが悪いな」
「何よ、失礼な!」
「さっさと帰れし!」
なんか、ますます怖いんですが。
「挑夢ちゃん、雅ちゃんの所に案内して」
「ごめん、出来ない」
のんちゃんが真剣に断ってる。
いつもやんわり断るのに、断固拒否が伝わる。
「仕方がありません。今日はこれくらいにして帰ります」
「さっきから帰れって言ってんじゃん」
「杏子、挑夢ちゃん」
その子は2人に向かって睨み付けてきた。
でも、視線の中心が違う。私な気がして震えそうになる。
「必ずまた雅ちゃんに会うから。その時は絶対邪魔させない」
この執着は何?
「それでは、ごきげんよう」
不敵な笑みを浮かべて、お付きの人を従えて去って行った。
「はぁー」
「疲れたよ~」
膝から崩れるように2人は床に座り込んだ。
慌てて私はしゃがむ。
「先輩、のんちゃん、大丈夫?」
「琴坂さん、大丈夫だから」
「みぃちゃん、早く雅虎の所に行った方が良いよ~」
緊張の糸が切れたのか、一気に疲れが現れている。
「あたしらのことはいいから早く」
「先輩…」
「早くゴーして~」
2人に促された私は立ち上がり。
「つばめ、私のクラスの所にいるから、のんちゃんお願い」
「つばめちゃんが?OKー任せて~」
「では先輩失礼します」
「あいよー!」
急いで保健室に向かった。
※
少し気持ちが落ち着いた。
保健室の先生はいるのに、誰もいない雰囲気だから、静かの極みである。
「宇城君、ちょっといい?」
先生が俺を呼んだ。
俺は起き上がり、靴を履いてカーテンを開けた。
そこにいたのは、知っている女の子。
「琴坂…」
「心配で来ちゃった」
気付かなかった。もしかして、俺、軽く寝てたかも。
「話せる?」
「あぁ…」
真ん中にあるテーブルと椅子に向かい、廊下側にある椅子に座った。
対面するように反対側に琴坂が椅子に座る。
「はい、ホットミルク。リラックスしてね」
先生の気遣いに、ちょっとだけじんわりと心が温かくなった。
ホットミルクを一口飲み、さらに落ち着く。
「美味しいです、先生」
琴坂、美味しいって顔に書いてあるな。
「ただあっためただけよ?」
パソコンに集中しながら会話をする先生。
「それが良いんです」
「ありがとう」
微笑ましく感じた。
「雅虎君、あの子は誰?」
いきなりの直球が投げられた。
深呼吸をしてから言う。
「幼馴染みの
俺の今まで出会った人の中で1番最悪な人。
会いたくなかった。
「杏子と挑夢と俺と雅深、いつも一緒にいたんだ」
幼稚園の時から一緒にいた幼馴染み。
あるきっかけで壊れた関係である。
「そうなんだ…」
真剣に聞く琴坂。
「教えて欲しい…詳しい、こと…」
気になるよな。
「長く、なるけど」
「良いよ」
いつかは話しても良いと思ってた。
でも、言えずにいたあのこと。
やっと誰かに、話す時が来たのだった。
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