魔法少女 冴子ちゃん
サトウ
プロローグ
誰もがあの戦いの日々を忘れ去って、日常を謳歌している。そんな中、彼女だけが魔法少女の記憶を持ち続けている。それは、彼女が日常から取り残される事を意味していた。
「瑠奈さん、魔法少女だった頃の事、本当に覚えてないの?」
「魔法少女って……あなた、病院行った方が良いんじゃない?」
「エメラルドさんの事、忘れちゃったの?」
「変な冗談ばっかり話さないでよね〜。それ、あんま面白くないよ」
彼女は知っている。自分の思い出を掘り起こせば掘り起こすほど、自分の墓穴を掘っているのと同意義である事を。
瑠奈や深雪と笑い合い、助け合いながら戦って、そして親友になれた日々は存在しないのだと。
あの日々は何か白昼夢のようなもので、現実には起きていない幻だと考えなければ、これから頭のおかしな人間として生きていくことになるのだと分かっている。それでも、彼女にとってあの日々は無くしてはいけない大切な日々となっていた。
彼女は最初、魔法少女なんて馬鹿げた事に付き合おうなどと考えなかった。他の世界からやって来る世界の危機の話など信じることは出来なかったし、何よりそのようなことが仮に現実に起こりうるのなら目を背けていたかった。
私以外の誰かに解決してほしい。それが彼女の率直な意見で、本心だった。そのような面倒なことには関わりたくなかったし、自分に世界を救えるような度胸も実力も存在しないことを知っていたから。しかし、現実と異世界の人々はそう簡単に彼女を逃してはくれなかった。
「世界を救う手助けをお願いします」
「私達にしか出来ないことなんですよ?」
「あたしらと手を組もうぜ」
「「「魔法少女になって」下さい」」
世界は彼女達を生贄に捧げることを望んでいる。彼女達は結局の所、世界に見捨てられた哀れな15歳の少女でしかなかった。
そしてある日、その中で最も運の悪かった少女、赤間冴子は大きな失望と、ほんの小さな喜びを感じながら、死んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます