サイバイ
サイバイ【1】
「あ。そうそう! これ貰ってよ」
一礼し、仕事に戻ろうとしたところを引き留められる。その声に振り向けば、新品の小さな袋を渡された。
「……かぼちゃの種?」
「そうそう。ハロウィンの後片付けってとこ? 大量に発注しすぎて、余っちゃったんだよね。張り切りすぎたなあ」
「それで、今年はやたら眩しかったんですか……」
トップである彼の好みゆえか、たまにここがどこであるか忘れるほどに、季節のイベントは盛大に執り行われる。
ハロウィンも例外ではなく、毎年本格的な飾り付けが施されるが、今年は一段と豪華だった。
「ピンポーン! でも、いつもの倍近いランタンに囲まれた賑やかなハロウィンも悪くなかったでしょ?」
「まあ、たまには」
期間中は、街中を彩る大小さまざまなランタンが発するあたたかい柑子色を目にするたびに心が安らいでいた。
「ちなみに、その品種だけど。ちょっと特別なやつでね」
内緒話をするように人差し指を唇に当て、したり顔をしている彼の言葉の続きを待つ。
「正しい育て方をして、生った実でランタンを作ると……想い人の魂が宿って実体化するんだって。自我を失ったものでも関係なしに」
なんとも奇妙な伝承があったものだ。
しかし、『お喋りな悪魔の口』の例もある。ここでは人間界の常識など通用しないのかもしれない。
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